「部下なし管理職」の給与は、どう定めるのが適正か?(1/2 ページ)
業務内容を給与にひも付ける「職務給」。その導入状況を見ると、全社員に職務給を導入する企業と管理職層だけに導入する企業とに分かれます。そして、一般社員層だけに職務給を導入する企業はありません。どうやら企業の職務給導入目的は「管理職層をどうにかしたい」というところにありそうです。
業務内容を給与にひも付ける「職務給」。その導入状況を見ると、全社員に職務給を導入する企業と管理職層だけに導入する企業とに分かれます。そして、一般社員層だけに職務給を導入する企業はありません。どうやら企業の職務給導入目的は「管理職層をどうにかしたい」というところにありそうです。
「管理職層」に位置付けられている人は狭義の管理職、つまり、組織図に記載されている公式組織の長(組織長)だけではありません。たいていは非組織長も含まれています。
職能資格制度(能力主義の等級制度)を採用している場合、組織長を務める能力があると認定された人は「昇格先行」で組織長ポジションがなくても管理職層に昇格します。また、非組織長の中には管理職相当の処遇がふさわしい専門職もいますが、そうとはいえない人も混ざっています。
「職能資格に降格なし」というように、職能資格制度は基本的に降格運用をしないので、組織長ポジションを外れた人や「昔は優秀だったんだけれど、今は……」という人も一般社員層には戻らず、管理職層のままです。そのため、仮に昇格審査を厳格に行っていたとしても、いずれ年功化してしまうのです。
多くの企業では、どう対処している?
管理職層の「組織長:管理職相当の処遇がふさわしい専門職:どちらでもない人」の比率を見ると、組織長以外の人の方が多いこともあります。そして、等級が同じであれば、組織長も専門職もどちらでもない人も、基本給はみんな似たり寄ったりで、役職手当で少し差がつくだけということが珍しくありません。
仕事の責任と貢献度はたいてい組織長のほうが大きいので、まずは管理職層の人たちの役割や責任を明らかにして、給与をそれに応じた形にしたいと考える企業が多いわけです。これが、企業の職務給導入に当たっての大きな動機になっていると見てよさそうです。
図表1をご確認ください。「マネジメント職」および「プロフェッショナル職」は、多くの企業の人事制度で使われている用語で、両者を合わせたものが管理職層です。
マネジメント職は、課長や部長など管理職層の組織長です。企業によっては課長代理などの組織長補佐が含まれていることがあります。プロフェッショナル職は、管理職層の非組織長です。基本的には専門職ですが、実態としては、どちらでもない人が含まれていることもあります。
「職能給」の世界では、管理職層と一般社員層の社員に給与差をつけることに優先順位がありました。管理職層、つまり具体的な担当職務もさることながら「経営側の視点で仕事に取り組む人」を明確にして厚遇しようという考え方だといえます。
それに対して職務給の世界は、まず、マネジメント職とそれ以外の人を区分しようとしています。経営側の視点で仕事に取り組む能力やスタンスではなく「実際に組織長としてマネジメントを担当している人」を明確に区分して厚遇する考え方です。「実際に○○という仕事を担当している人」という切り口が職務給の特徴です。これまで同じような職能給をもらっていた組織長と専門職、どちらでもない人の給与に差がつきます。
関連記事
- 幹部候補か、“万年ヒラ”か キャリアの分かれ目「30代以降の配置」を、人事はどう決めている?
「育成」の観点から異動配置させる20代が過ぎると、多くの企業は「幹部候補の優秀人材」と「それ以外」の社員を選別します。人事は、そうした異動配置をどのように決めているのでしょうか。年代層別の異動配置のロジックをみていきます。 - 「優秀でも残念でもない、普通社員」の異動に、人事が関心を持たない──何が起きるのか
社員の異動を考える際、人事部が真っ先に関心を持つのは「優秀社員」と「残念社員」。その間にいる大多数の「普通社員」は後回しにされがちという実態がある。しかし、この層への取り組みを疎かにすると、ある懸念が生まれる。 - 総合職も「仕事によって給与を変える」べき? 誤解だらけの「職務給」3つのタイプ
務内容を給与にひも付ける「職務給」への関心が高まっており、導入を検討する企業が増えています。しかし、メディアで極端な事例ばかりが取り上げられがちなせいか、人事部や経営者にも日本における職務給導入企業の実態があまり正確に伝わっていません。例えば「ジョブ型を導入すると解雇しやすくなる/されやすくなる」と思っていませんか? また「職種や担当業務が変わると給料が変わる/職種や担当業務が変わらないと給料が変わらない」と思っていませんか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.