生成AIは「どこまで」コンタクトセンターの仕事を奪ったのか 人間がやるべき仕事は?(1/3 ページ)
ChatGPTの登場により、AIが人間の仕事を奪う議論が信ぴょう性を持つようになりました。今回はコールセンターに焦点を当て、実際にAIはどこまで入り込んできているのか、人間がやるべき仕事について考えてみます。
2022年11月に公開され、たちまち話題となった生成AI「ChatGPT」。もちろん、ChatGPT登場前から「AIは人間の仕事を奪うのか」という議論や、AIが人間の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)はいつなのか、という議論は繰り返されていましたが、一般のビジネスパーソンにとっては空想の話に近かったように思います。
しかし、ChatGPTの登場によってよりリアルな話になりました。今後、AIは人間の仕事を奪うのか? 奪うとしたらどんな仕事が代替され、どんな仕事が生み出されるのでしょうか。
そうした疑問に対して、私は「生成AIは人間の仕事を奪うのではなく共創するためのツールだと捉えるべき」だと考えています。本稿ではすでにAIによる代替が進む業務の一つである「コールセンター」に絞って、「生成AIはコールセンターの仕事を奪うのか」「現時点でどこまで代替できているのか」「今後人間がやるべき仕事は何か」について解説します。
AIは実際「どこまで」コールセンターの仕事を奪ったのか?
米国OpenAIが22年11月にChatGPT3.5を発表して以来、現在でも生成AIに関する話題を聞かない日はありません。生成AIは、画像やキャッチコピーの作成、資料作成の効率化、仕事の効率化、医療品の開発支援など幅広い領域での活用が試みられています。
当社は、企業のLTV最大化をブランド体験(Brand Experience)の向上を通じて実現するBXプラットフォーム「BOTCHAN」を開発・運営しています。23年3月からはマイクロソフト社が提供するAzule OpenAI Serviceを実装することで、従業員のような振る舞いを再現し、オンライン接客の自動化を実現する「BOTCHAN AI」を提供しています。
10年頃に登場したチャットボットは、10年以上の歴史を持つサービスです。誰でも簡単に安く設置できるシステムである一方、コミュニケーションのツールとしては不足感が否めませんでした。WebサイトのFAQページに設置されているチャットボットに質問をしても聞きたいことにたどり着けなかった、という経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
あらかじめ作成したルールにのっとって顧客の質問に回答する仕様であるため、事前に登録されていない質問や複雑な質問には回答できません。顧客は悩みを解決できないというストレスから、最終的にコールセンターに電話することも少なくありませんでした。また、チャットボットの担当者は質問の解決率を上げるために、回答ロジックのPDCAを何度も回すなど、運用工数が肥大化してしまう欠点もありました。
その状況がChatGPT登場により大きく変わりました。ChatGPTをチャットボットに実装することで、前後の文脈を理解し、適切な回答ができるようになりました。従来のチャットボットも「洗顔フォームでおすすめはありますか」という要望に対し「弊社の商品ならこういうのがおすすめで、こういったところが特徴です」と返すことはできていました。しかし、次の「それって乾燥肌でも使えるのですか」という質問には、前の文脈を読み取れないために対応できませんでした。ChatGPTを実装したチャットボットであれば、1個前の会話から判断し「この洗顔フォームは乾燥派の方でもご利用いただけますよ」と、百貨店の美容部員や接客スタッフの方々と話すように返答ができるのです。
つまり、生成AIの登場により「FAQの自動化」だけでなく、「接客の自動化」と言えるまでに進化しているのです。その結果、人間がやっていたコールセンター業務のほぼ全てを代替できるようになり、コストメリットも生まれ始めています。HubSpot Japanが5月に実施したマーケティングに関する調査によると、62.3%のマーケターが「広告単価が上昇している」と回答しました。生成AIを実装したチャットボットを活用することで、上昇した広告コストを相殺するのはもちろん、24時間対応も可能なため、気になったときにすぐに問い合わせたい顧客ニーズを取り込めるようになるでしょう。
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