「USPがUSPではない問題」 マーケ戦略の落とし穴、誰にとってユニークなのか?:トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾(1/3 ページ)
マーケターの基本である「誰に」「何を」「どのように」伝えるか、がハマっていない事象をよく目にします。なぜ起こってしまうのか? 原因は「USP」にあることが多いです。
連載:トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾
「思うように売り上げが上がらない」「マーケティングが効いているのか効いていないのかわからない」理由の多くは、戦略が論理的に組み立てられていないことに起因しています。本連載では、マーケ戦略策定に潜む10の落とし穴とその解決法を解説していきます。どうすれば「筋の良い」マーケティング戦略を組み立てることができるのか?――トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾、開講です。
前回から「筋の良いマーケティング戦略が描けない理由」の後半戦にあたる「そもそも問題」に移り、「正しくマーケティング課題(病気)を特定し、課題に合った薬を処方する重要性」について解説しました。
今回は「USP(Unique Selling Proposition:商品・サービスの独自の強み)がUSPになっていない問題」について解説します。
その強み、誰にとってのユニークネス?
マーケティングの入門書には「誰に」「何を」「どのように」伝えるかが、マーケティングコミュニケーションの「キホンのキ」と書かれています。本質的かつシンプルで分かりやすいフレームのため、多くのマーケターが現場で使用しているものの、どうもうまくハマらないケースが少なくないようです。なぜなのでしょうか?
その理由は、一番重要な「何を」のベースとなるUSPが曖昧または間違っているからです。USPとはUnique Selling Propositionの略で「独自の強み」を指します。しかし、この「独自の強み」が「誰にとっての強み」なのか、その強みが「誰にとってユニークネス」なのかがズレているケースが多いのです。
下図は、USPを示す概念図です。
プロットされている3者は3C分析(Customer, Company, Competitor)と同じですが、顧客は「顧客ニーズ」、自社は「自社の強み」、競合は「競合の強み」となっているところに違いがあります。
- 一定量の顧客ニーズ(市場)があるものの
- 競合の強みでは解決できず
- 自社独自の強みなら解決できる
この3点が「全てそろっている」ものがUSPです。しかしこの条件を満たせている商品・サービスは決して多くありません。多くの現場でUSPについて以下のような状況に陥っています。
- そもそも顧客のニーズがあるか怪しい(シーズ発想の製品開発に多い)
- 競合もほぼ同等の価値が提供できてしまう
- 「強み」や「新しさ」が業界や自社にとってのユニークネスになっている
このように議論が十分になされていないケースが目立ちます。それぞれ簡単に解説しましょう。
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