マーケ課題に「万能薬」はない なのに「病気を特定」できない企業が多すぎる:トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾(1/2 ページ)
ビジネスの現場では「マーケティング課題と解決策が合致していない」状況にしばしば遭遇することがあります。なぜこのようなすれ違いが発生してしまうのか? 病気と流行り薬の関係性になぞらえて解説します。
連載:トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾
「思うように売り上げが上がらない」「マーケティングが効いているのか効いていないのかわからない」理由の多くは、戦略が論理的に組み立てられていないことに起因しています。本連載では、マーケ戦略策定に潜む10の落とし穴とその解決法を解説していきます。どうすれば「筋の良い」マーケティング戦略を組み立てることができるのか?――トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾、開講です。
ここまで「筋の良いマーケ戦略が描けない理由」というテーマの中でも、戦略立案〜実行面において発生する「よくある問題」について4回にわたり解説してきました。
本記事からは「そもそもの問題」に話題を移します。初回となる今回は「マーケティング課題と解決策が合致していない」問題を、「治すべき病気を正しく診察・診断する前に流行(はや)りの薬を飲み、結局病気が治らない」という状況に照らし合わせて解説します。
本題に入る前に、改めてマーケティングの目的を整理しておきましょう。それもちろん「顧客に買ってもらうこと」です。その目的を達成するために「顧客が買ってくれない理由」を見つけ、それらの課題を解決することで「顧客数を増やし、買ってくれる。または買い続けてもらう確率を高めること」といえます。
つまり、マーケターの仕事とはお医者さんと同じなのです。体調が悪い患者(自社やクライアント)を診察し、病気を特定して、最適な薬を処方する。これさえできれば、多くのマーケティング課題は解決に向かいます。
にもかかわらず、マーケティングの現場では頭痛の人に胃腸薬が処方され、患者が「薬を飲んでいるのに効かない!」と嘆く医療ミスがそこかしこで頻発しています。なぜなのでしょうか。
なぜ、病気を特定できないのか?
要因の一つに、次から次に出現するバズワードの存在があります。
「○○はもう古い! これからは○○だ!」といった構文で、SNS、バズ、UGC(User Generated Content)、エンゲージメント、コンテンツマーケティング、ファンマーケティング、動画マーケティング、Z世代、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった「新しい手法」や「新しいコンセプト」がメディアをにぎわせ、競合の成功事例を見て「うちもやるぞ!」と飛びついてしまう。
これらの新しい手法やコンセプトは、何かしらの病気を治す「薬」です。この世に「どんな病気も一発で治せる次世代の万能薬」がないように、マーケティングの世界にもそんなものは存在しません。頭痛薬は頭痛にしか効かないように、特定の手法や施策は特定の課題にしか効かないのです。
にもかかわらず、マーケティング業界では「薬そのもの」が流行(はや)ってしまう。「すごい新薬が出ました!」「どんな病気でも治ります(=売り上げが伸ばせます)」「みんな飲んでます!」といった具合です。
仮にあなたの体調が悪く、病院を訪れ診察室に通されたとき、お医者さんが開口一番「すごい新薬が出たんです」「あなたの病気もきっと治りますよ」「みんな飲んでます」「あなたも早く飲んだ方が良いですよ」と言われたらどう思うでしょうか。「いや、薬の前に診察してくれよ!」「いずれにせよそんな怪しい薬飲みたくないわ!」と思いますよね。
一方、業界では「先生、最近体調が悪いんです(=思うように売り上げが上がらないんです)」「最近話題の“あの薬”をもらえませんか?」と、患者側が新薬を求めてしまう問題があります。ちゃんとした知識と理性を持ったお医者さんなら「いや、まずはしっかり診察して病気を特定しましょう。あなたが飲むべき薬を決めるのはその後です」と言うはずですが、残念ながら世の中にはいろいろなお医者さんがいます。
誤解のないようにお伝えしておきますが、バズワード(新しい手法やコンセプト)が悪いのではありません。悪いのは、診断をすっ飛ばして薬を販売しようとする医者と、診断そっちのけで薬を欲しがる患者なのです。マーケティングの現場で大量に発生している医療ミスは、正しい診断と処方のプロセスを経ず、流行に乗って手っ取り早く成果を獲得しようとする医者と患者の双方に問題があるのです。
この世に「どんな病気も一発で治せる万能薬(どんなマーケティング課題も一発で治せる万能施策)」がない以上、病気を治すためには「病気を正しく診断」し、「その病気を治せる最適な薬を飲む」しか方法はありません。
診断と処方が一致していること。当たり前のことですが、これが大前提なのです。
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