きゃりーぱみゅぱみゅ・VERBALが語る「日本音楽ビジネス」の現在地 「世界は日本を求めている」:終わり始めた“鎖国”(2/2 ページ)
昨今、日本発の音楽が世界で人気を博している。これまでは経済規模が大きいことから“鎖国”していても問題なかったところで、何が変化してきているのか。世界で活躍するきゃりーぱみゅぱみゅさんや仕掛人のアソビシステム・中川悠介代表取締役、VERBALさんらが語った。
想像の5000倍、世界は「日本」を求めている
音楽単体でなくカルチャーとの結び付きを強めていく上で具体的なキーワードになるのが「リミックス」と「アニメ」といえるかもしれない。VERBALさんは自身の経験を基に、次のように話す。
「日本はこれまで、島国ということもあって海外の良いものを取り入れて、それをさらに良くなるように加工して輸出してきました。こうしたリミックスカルチャーは、大きな強みではないでしょうか。
また、日本人が認識している5000倍くらい、海外では日本のコンテンツを求めています。実際に行かないと分からないものですが、アニメ・エキスポなどはものすごい熱量で『日本から来た』というだけで大きな反響が聞こえてきます。私もm-floとしてアニメのコンベンションイベントに出た際は、6500人の会場をファンが埋め尽くしてくれて、全員が日本語でサビを歌ってくれました。IP(知的財産)の力を強く感じて、そこからは戦略の立て方が変わりましたね」
より実務的な面では、官民を含めた「オールジャパン」体制を今一度考え直すことも必要だろう。日本のコンテンツを売り出すため、13年に官民ファンドとして設立した、いわゆる「クールジャパン機構」は巨額の赤字が話題にもなった。
中川さんはクールジャパンというキーワードが話題になった10年前ごろを振り返り「政治家や評論家などのコンサルティングがメインで、プレイヤーが少なかったと思います」と話す。ビジネス面を意識するプレイヤーが増えた今こそ、コンサルティングとプレイヤーが近付いてオールジャパン体制を敷くべきだという。
Kevin Nishimuraさんも「盛り上がりを見せること」が重要だと説く。
「多くの人に盛り上がりを露出して、モーメントを作ることが必要です。そうした盛り上がりが、米国など世界各国でのフェスなどにつながっていきます。各国にはたくさんのフェスがありますが、日本のカルチャーを前面に打ち出したものが少ない点は課題です。日本のコンテンツはとても素晴らしいのに、非常にもったいないと感じます」
組織のマインドをどう変えていくべきか
セッションの終盤では、組織内のマインドを変化させる必要性にも話が及んだ。
「これまで日本は国内の経済規模が大きいこともあり、国内だけでコンテンツビジネスが成り立っていました。世界で活躍しているアーティストよりも、国内で活動しているアーティストの方がCDを多く売っている時代があったほどです。
しかし、これからのストリーミング市場では、外に打って出るマインドが必要ではないでしょうか。アニメやゲームを中心に『日本』というだけでブランドになる時代ですから、音楽でも現地パートナーと一緒になって、戦略を立てていくべきだと感じます」(VERBALさん)
「そのためには組織内の変化も必要ですよね。マネジメント層がより多様にならなければ、各国の文化や文脈、法律や商習慣に対応できません。アーティストではなく、まず各社が変容するような組織作りが求められるかもしれません」(Kevin Nishimuraさん)
メディアの変化によって、伝えられるものは文字や画像、さらには動画まで広がる昨今。これまで高かった世界の壁は、言葉だけではない伝え方がどんどん可能になったことで、乗り越えやすくなっているはずだ。こうした変化を取り入れて人気を得てきたのがきゃりーぱみゅぱみゅさんであり、最近では「新しい学校のリーダーズ」も注目を集める。“鎖国”が終わり始める昨今、今後の日本音楽に期待が集まる。
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