もし新卒が「蛙化」したら……企業が取るべき対策は?
学生が「この会社に決めて良いのか」と不安になるのは自然なことだ。新卒をつかんで離さない企業は、こういった学生の不安に寄り添い、解消するための取り組みを行っている。
具体的には、選考段階で面接とは別に社員との面談を行って情報提供や不安の解消に努める、面接後に丁寧なフィードバックを行う、内定式や懇談会、入社前研修を対面で実施し高い頻度で連絡を取る――など、多くの企業が新卒の心を離さないような工夫している。
実際に学生からは、内定後の入社予定企業との接点を望む声が多く挙がっている。その理由は「社風や職場の雰囲気を知りたい」「仕事内容や進め方を知りたい」「仕事のやりがいや苦悩を知りたい」「社会人として働くイメージを持ちたい」など、個人でバラつきがある。そのため、ただ関わりを持つだけでなく、個別に学生の不安や心理状態を把握し、悩みを解消できる機会を持てるかがポイントとなるだろう。
企業は内定後のフォローとして面談の機会を設け、ネガティブな情報も含めて開示することが重要となる。内定者は直接不安を言いにくいため、内定者の質問から背景にある不安要素をくみ取ることが必要だ。これらの取り組みで不安が解消されると、学生は「この企業なら」と安心感を得てモチベーション向上につながる。
また、同社は「蛙化現象」の背景にある学生の不安に関して、「自己理解」「仕事理解」「相互理解」「企業理解」の4つの理解不足から生じていると分析している。
特に「自己理解」は、その他の理解や「自分と合うか」判断する際の基準になる。そのため「自分の評価されたポイントが分からない」「何となくこの会社が良いと思っているけど実際どうだろう……」と悩むような自己理解が不足している学生は、優先的にフォローしなければならない。
同社の志望度調査によると、就職活動を通じて「企業が自分を必要としていることが伝わった」と感じる就活生が低下しているという。これは選考が早く進むことで、学生が「自分が企業に十分に理解されている、必要とされていると感じにくくなっている」ことが要因だと考えられる。
企業は面談の機会に学生を評価したポイントを伝え、自己理解を促すべきだ。併せて入社動機や入社時点で大切にしたいことについても対話を重ね、全てを踏まえたうえで、入社後はどのように活躍してもらいたいかなど「その就活生に期待すること」を伝える必要がある。
「体験」で深める自己理解 企業が場を設ける手も
自己理解は、生涯を通じて納得感のあるキャリアを築くための「資源」となるため、学生側も就活の自己分析で終わらせず、内定後や入社後も継続的に行うことが重要だ。
自己理解は「体験」によって得たものや感じたことを言語化することで、より深められる。就活や内定、入社などの状況の変化を体験の一つとして自己理解を深め、それを基に選択していくことで納得感のあるキャリア構築につながっていく。
また自己理解促進のきっかけ作りとして、企業側が研修などで自己理解の場を設けるのも一つの手段だろう。
内定を出すことはゴールではなく、スタートだ。内定を出して終了、ではない。内定者、新卒の心理状態、不安を把握してフォローを続ける――新卒の心をつかんで離さない企業が増えることを願っている。
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