なぜクルマは高くなってしまったのか 高額化に恩恵を受ける人も:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
自動車の価格がどんどん高くなっている。製造コストや開発コストの増大に加えて、先進装備の充実や安全性向上も求められているからだ。メーカー、ディーラー、そしてユーザーにとって、高額化はどのような意味があるのか。
メーカーやディーラーにはどんな恩恵があるか
車両価格が上昇すると、同じ販売台数でも売り上げ金額は当然高くなる。だからディーラーやメーカーにとっては、車両価格が高い方が利益には結びつきやすい。オプションやアクセサリー、オイルやタイヤなどの消耗品も、高額車両の方が費用はかさむ傾向にあるから、利益も増えるのだ。
それにユーザーを囲い込むためにも、車両価格は高い方がいいのである。
近年、分割払いでクルマを購入するユーザーの間で、残価設定ローンを利用するケースが増えている。車種や地域により差があるようだが、高級ミニバンなどでは半数以上が残価設定ローンを利用しているというデータもある。
自己資金が少なくても高級車に乗れるというのは、ユーザーにとって魅力ある話だろう。それを逆手に取って、車両価格が上昇しても残価設定ローンで3年後、5年後の残価率を高く設定できれば、高額車両が売りやすくなる。それだけでなく、ローン終了後にはまた新型車を残価設定ローンで購入してもらうとともに、下取りとして良質な中古車を手に入れることができるのだ。
これによって、ディーラーはユーザーの囲い込みを万全にして、安定したペースで販売台数を稼ぐことができるようになる。こう書くと、ユーザーはディーラーの“食い物”にされているようにも思えるが、実際には共存関係に近いと見ることもできる。
ユーザーとて本来の予算なら手に入れるのが難しい、贅沢(ぜいたく)なクルマを乗り回すことで満足感を得るのだから、メリットは享受している。
こうした傾向は、高級車ほど顕著なように感じる。今年フルモデルチェンジを果たしたトヨタ「アルファード」は、ハイブリッドの最上級仕様となると850万円を超える。10年前の2世代前は612万円であったことを考えると、4割近い上昇ぶりなのだ。
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