なぜクルマは高くなってしまったのか 高額化に恩恵を受ける人も:高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)
自動車の価格がどんどん高くなっている。製造コストや開発コストの増大に加えて、先進装備の充実や安全性向上も求められているからだ。メーカー、ディーラー、そしてユーザーにとって、高額化はどのような意味があるのか。
クルマの高額化はますます加速
このように近年のクルマは贅沢な装備をどんどん追加して価格を引き上げて、ユーザーの満足度を高めつつ、自動車メーカーやディーラーの利益を確保している。コロナ禍で乗用車の需要が高まり、半導体不足など生産の乱れもあって、最近は納期を最優先するユーザーが増えたことから、販売条件は売る側にとって有利になった。1台当たりの利益は増加傾向にある。
人口減少でこれからクルマの保有台数は減少していくことになるから、ディーラーの生き残り策としても高額化は重要な条件なのだ。
クルマの生産については、最新の生産技術「ギガキャスト」など、コストを圧縮する方法の採用が進むかもしれない。また「ジャパンモビリティショー2023」で展示された超小型モビリティなど、これまでにないジャンルのモビリティも併用されることで、乗用車の需要は低下していくことも想像できる。
今後、ますますクルマは高額化していくだろう。燃料も今よりも安くなる要素はほとんどない。モビリティの多様化も進み、自家用車は再び贅沢品へと向かっていくことになりそうだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
関連記事
- 「新型アルファード」価格が爆上がり 転売ヤーが相変わらず減らない理由
トヨタの新型アルファードの人気がすさまじい。新車がなかなか手に入らないこともあって、オークション価格が上昇しているのだ。「アルファードが欲しい」という消費者にとっては、逆風が吹いていて……。 - 「クルマのボディサイズ」が大きくなっている、これだけの理由
「クルマの大きくなっているなあ」と感じる人も多いのでは。駐車場は狭いままなのに、なぜ大きくなっているのか。背景を探っていくと……。 - なぜガソリンの価格は分かりにくいのか 値引きの仕組みが複雑な理由
ガソリンスタンドの価格が分かりにくい。店の看板がいくつもあったり、値引きも複雑であったり。なぜこのような仕組みになっているのかというと………。 - 教習所のクルマが旧態依然としているワケ 教習車ならではの事情
運転免許取得のために通う自動車教習所で使われるクルマには、EPB(電動パーキングブレーキ)などの先端装備は搭載されていない。教習内容を厳格に定められている教習所ならではの事情があるからだ。教習車に求められている要素とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.