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「段ボールに傷が」ムダな返品、どうなくす? 日本人の美意識とAIの挑戦(3/3 ページ)
商品自体に問題はなくても、外箱の梱包段ボールに擦り傷があるだけで全て返品・廃棄される――こうした無駄をなくそうと、飲料大手のサントリーと富士通がAIを用いた物流DXに挑んでいる。
返品の背景に「日本の美的感覚」?
課題解決へ一歩を踏み出した今回のプロジェクト。しかし、そもそもなぜ、こうした「返品」は続いてきたのだろうか。
本来、梱包段ボールは、中身の商品を守る役割を持っており、表面の傷はその役目を果たしている証ともいえる。「本当に中身に問題があれば、飲料商品なので液体が漏れるはず」と上前さんは話す。
それでも長年、返品が起きてきた理由の一つとして、上前さんは「日本の美的感覚」に言及する。
日本には独自の「包む」文化が存在する。贈り物を包装したり、風呂敷に包んだり。中身だけでなく外側にも美しさを求めるといった文化的な背景が、物流現場における返品を生み出す要因の一つではないか、と上前さんは考えている。
昨今は物流業界の人手不足で、現場では外国人の雇用も進む。異なる文化的背景を持つ現場の担当者に、出荷可否の判断を負わせ続けるのは限界がある。こうした観点からも、AIを用いた判断基準の統一化は、喫緊の課題と言える。
上前さんは「プロジェクトを通じて、現場の課題の『見える化』につながったことは意義が大きい」とし、「多くのムダが起きていることを、一人でも多くの人に知ってもらえるとうれしい」と話している。
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