なぜ「サマンサタバサ」はここまで追い詰められたのか 「4°C」との共通点:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「サマンサタバサ」が崖っぷちに追い込まれている。ボーナスの支給がないほど業績が低迷しているわけだが、なぜここまで追い込まれているのか。「4°C」との共通点があって……。
ナイキの価値は下がっていない
しかし、渋谷を歩く若い女性が、ナイキの服を着て、ナイキのスニーカーを履いていて「ダサい、安っぽい」などとディスられることはほとんどない。ハイブランドの服に合わせている人もたくさんいる。
つまり、ナイキはゴリゴリに「大衆化」しているにもかかわらず、ブランド価値がまったく落ちていないのだ。もっと言ってしまえば、「ラグジュアリーブランド」という顔もある。
世界最大級のブランド価値評価機関である英ブランドファイナンスが発表した「ブランドファイナンス Apparel 50 2022」でナイキはルイ・ヴィトン、グッチ、シャネルという世界の名だたるラグジュアリーブランドを抑えて、8年連続ナンバーワンを獲得している。
なぜこうなったか。ひとつは低価格の汎用スニーカーやTシャツなどを出す一方で、自分たちの「ブランド価値」を体現するような高額なスニーカーやスポーツアパレルを世に送り出し続けたことだ。つまり、顧客から高いとそっぽを向かれることに日和ることなく、「高級化」もしっかりと進めた。
分かりやすいのは17年2月、米Business Insiderが配信したDennis Greenというテクノロジーと小売の関係性について取材を進めているシニア記者の「ナイキがいつの間にか“ラグジュアリー・ブランド”に!」という記事だ。(参照リンク)
『最近、ナイキ(Nike)のシューズや服を買ったり、新しい店に足を運んだ人はもう気付いているだろうが、ナイキはこのところ、高級志向にシフトしている。Forbes(フォーブス)誌のランキングによると、2016年、ナイキは世界で最も高級なアパレル・ブランドとしてルイ・ヴィトンを超えた』(Business Insider 2017年2月3日)
ここまでしっかりと高級化すれば、いくらスポーツ店で2980円のスニーカーがあっても、ナイキの価値は下がらない。それをよく示すのが、高級ラグジュアリーブランドとのコラボだ。
例えば、22年にはルイ・ヴィトンとコラボしたスニーカーはMidが42万5700円、Lowが34万1000円でも飛ぶように売れている。ナイキの価値が、ヴィトンの価値と釣り合っているからできたコラボだ。
サマンサタバサのバッグは高価格帯であっても5万円ほどだ。ブランドバッグとしては「お求めやすい」というカテゴリーなので、それなりの売り上げは見込めることと引き換えに、どうしてもブランド価値がチープになっていく。ストレートに言ってしまうと、「大衆的なバッグブランド」というイメージが広がって「憧れを抱けない」のだ。
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