5500円もするシャーペン、なぜ即完売? 三菱鉛筆「クルトガダイブ」の画期性:2023年、話題になった「あれ」どうなった?(2/3 ページ)
三菱鉛筆のシャープペンシル「クルトガダイブ」が人気だ。店頭に並んだ瞬間、すぐに売り切れるという。ただ、価格は5500円と強気だ。シャープペンシルにしては高価だが、なぜこんなに売れているのか?
以前もあった「自動芯繰り出し機能」 これまでとどう違う?
「自動芯繰り出し機能自体はこれまでにもありました。しかし従来品は、芯が減っていくと同時に金属部分のパイプも少しずつシャープの中に引っこんでいく仕様でした。一定の位置までパイプが後退すると定位置に戻り、それと同時に芯も出るのですが、それまではパイプを引きずるような形になるので、書きながらパイプがガリガリと紙に当たってしまうことがありました」(西村さん)
少し書きづらさを感じながら自動で芯が出るのを待つくらいなら、普通にノックしてパイプと芯を出した方が良いと感じる人もいるだろう。クルトガダイブの特徴はこの「書きづらさ」を解消した点にある。
クルトガの「40画書くと芯が1回転する」という機構を応用し、一定の画数に達すると自動で芯が出るように設計。クルトガと同じペースの40画で芯を出し続けると芯が出すぎてしまうらしく、そこの微調整にも苦労したという。
芯の消耗量も考慮した。筆圧や芯の硬度、使用シーンによって芯の消耗量は変わるため、個人差を踏まえ、芯の繰り出し量を5段階で調整できるように。自分好みにカスタマイズできるわけだ。
キャップで高級感を演出
キャップもクルトガダイブを語る上で欠かせない存在だ。キャップがあることで、シャープペンシルっぽくない見た目になっている。どちらかと言うと、ボールペンや万年筆に近く感じる。価格に見合う高級感のある商品の演出に一役買っているようだ。
もちろん機能面での意味合いも大きい。西村さんは「従来の自動芯繰り出しが搭載されたシャープペンシルでも使い始める時は一度ノックして芯を出す必要がありました。キャップをすることで、芯が出ている状態でも保管できます。芯をしまう必要がないので、キャップを外してすぐに書き始められます」と説明する。
また、ペン先の保護という狙いもある。ペン先が出ていると衝撃が加わった時にパイプが折れてしまい、書き心地に影響を与えてしまうかもしれない。長く使用できるようにキャップでペン先を保護しているのだ。
キャップが生む「心理的な効果」もありそうだ。「キャップにマグネットを付けているので、はめた際に『カチリ』という音がするようにしたんです。クルトガダイブは”書くにのめり込む”をテーマに開発しています。音がすることで、書く作業に一区切りつける、切り替えるという意味付けができるようにしました」(西村さん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
東急歌舞伎町タワー、開業9カ月でどんなことが見えてきた?
4月に東京・新宿に開業した「東急歌舞伎町タワー」は少し変わった複合施設だ。エンタメとホテルに特化しており、オフィスや高級ブランドは入っていない。ちょっと変わった業態の9カ月の軌跡について、運営するTSTエンタテイメントの木村社長に取材した。
iPhoneの「りんごマーク」 なぜ、真ん中ではなく上に? 知られざる人間の心理
なぜiPhoneの「りんごマーク」は真ん中ではなく、少し上のほうにプリントされているのだろうか? そこにはブランドに対する納得感を生む工夫が施されていた。
「細長いボトル」VS.「幅のあるボトル」 どちらが高級と感じる? 知られざる人間の心理
「細長いボトル」と「幅のあるボトル」があるとする。中身はどちらも同じ水なのに、人間は無意識的に片方にだけ「高級感」を覚えるという。どちらに高級感を覚えるのかというと……
なぜ、人は飲み会後にカラオケに吸い込まれるのか 「7つの欲求」から分析
なぜ、人は飲み会後にカラオケに行きたくなるのでしょうか? そして、なぜカラオケはこんなにも人々を魅了するのでしょうか? 人間が持つ「7つの欲求」から分析していきましょう。
ブランディング広告を止めると、1年後にどうなる? シミュレーションから見えてきた
ブランディング広告は、短期的な売り上げだけでなく、将来の売り上げにもつながる中長期的な効果を持つ。そんな特性を持つブランディング広告を止めるたら、1年後そのブランドはどうなっているのか? 実際にシミュレーションしてみたところ……。


