Spotifyで人気爆発、日本発「ガチャポップ」とは?:2023年、話題になった「あれ」どうなった?
デジタル音楽配信サービス「Spotify」が5月にローンチしたプレイリスト「Gacha Pop(ガチャポップ)」が海外で人気だ。日本の音楽をごちゃ混ぜにしたプレイリストがなぜ人気なのか。
デジタル音楽配信サービス「Spotify」が5月にローンチしたプレイリスト「Gacha Pop(ガチャポップ)」が海外で人気だ。ガチャポップに収録されている曲は日本の曲という共通点はあれど、ジャンルはポップソングからゲーム関連曲、ネットカルチャー系などさまざまだ。
Spotifyはなぜこのようなプレイリストをつくったのか、またなぜ海外から支持を集めるのか――。同サービスを運営するSpotify(東京都渋谷区)の音楽企画推進統括、芦澤 紀子氏に聞いた。
海外から大反響 ガチャポップとは一体?
──ガチャポップの海外からの反響を教えてください。
海外からのアクセスは平均して8割を超えており、圧倒的に海外シェアの高いプレイリストです。
24歳以下のリスナーが6割近くいて、アニメ、ゲームなどの日本のポップカルチャーに興味のあるZ世代の海外リスナーの支持を集めているといえます。
5月にローンチした新しいプレイリストは「今年海外で最も聴かれた日本の公式プレイリストランキング」の5位となり、海外からの人気を裏付ける結果となりました。
──ガチャポップに収録する曲は、どのように選んでいるのでしょうか?
選曲は、候補となる楽曲のデータも見ながら、Spotifyのエディターによって収録しています。
ガチャポップはジャンルではなく、海外にユニークで多様な日本カルチャーを紹介するプレイリストの名前なので、特定のジャンルに固執するのではなく、その時その時で日本のポップカルチャーを象徴するような楽曲を、柔軟性を持って選曲しています。
アニメやゲーム関連曲、ボカロ、ネットカルチャー系などをボーダレスに選曲していますが、データを見ながら海外比率の高い楽曲、海外バイラルチャートで反応のある楽曲などを常に優先的にプログラミングしています。
日本の楽曲の独特なコード感やユニークな構成、演奏の素晴らしさや独自性も含めたクオリティーの高さを、あらためて海外に発信していきたいと考えています。
──日本の楽曲の海外での広がりにおいて「ガチャポップ」の果たす役割はどこにあると感じていますか?
ガチャポップは今海外で(時には一部の地域で)バズが起きている、または起き始めている楽曲をデータなどをみながら早い段階でピックアップし、より広いリスナーに向けてお届けするという役割を担っていると思います。
海外で特に人気のある曲は
──今、海外で特に人気のある日本の曲はなんでしょうか?
ガチャポップ上のデータで分析すると、以下の楽曲が人気です。
- King Gnu『SPECIALZ』:漫画『呪術廻戦』の海外での盛り上がりに合わせて、ここ最近最も聴かれており、お気に入りに登録されている楽曲の1つです。
- 米津玄師『KICK BACK』:漫画『チェンソーマン』との相乗効果で、プレイリストローンチ当時から安定して聴かれています。
- Vaundy『踊り子』:同曲のアルバムリリース前後で米国、東南アジアを中心によく聴かれています。
- 米津玄師『地球儀』:映画『君たちはどう生きるか』の海外公開で、楽曲の人気度が上がっています。
- YOASOBI『群青』:YOASOBIは複数の楽曲をフィーチャーしているが、最近はその中でも「群青」の人気が高い)
- Serani Poji『ぴぽぴぽ』:2000年代にゲーム音楽から派生した音楽ユニット“Serani Poji”の楽曲で、現在海外で大反響を呼んでいます。
Gacha Pop以外にも目を向けると、グローバルスタンダードを視野に入れて活動しているXGの楽曲や、Lampや青葉市子などのチル系の楽曲も海外で人気です。
予測不可能な“バズ” Spotifyはどう見ているか
──日本と海外のカルチャーはこれまで以上に予測不可能な形で融合し、新たな流行を生み出していると感じます。こうした現代のシーンについてどのように見ていらっしゃるか、また、Spotifyとして果たしたい役割は何でしょうか。
特にコロナ禍以降、動画投稿系のソーシャルプラットフォームが世界中に波及し、楽曲を使ったさまざまなユーザー投稿が思いもよらぬバズを生み、そこからストリーミングに波及してバイラルヒットするパターンが目に見えて増えてきました。
この傾向は、松原みき『真夜中のドア』や、藤井風『死ぬのがいいわ』など、アニメとは直接関係のない楽曲が数億回規模の再生値を世界でたたき出すようになって可視化されてきています。
特に今年は「海外で最も聴かれた国内の楽曲ランキングTOP10」の7曲がアニメ関連曲以外で構成されていたりと、予測不能な形で多様化が広がっています。
こうしたトレンドは、国内マーケットで独自の発展を遂げ、“ガラパゴス”とも呼ばれていたJ-Popシーンに新たな光が当たっているともいえます。また、時代も飛び越えて世界のリスナーから新たに発見されていくことで、より広がっているようにも思います。
Spotifyとしては、そのような世界に誇れる日本のユニークなポップカルチャーを、国内外のリスナーに魅力を感じていただける形で多角的に発信するお手伝いができたらと思っています。
また、楽曲をきっかけに興味を持ったリスナーが、そのアーティストのファンになってもらえるような取り組みにも引き続き力を入れていきます。
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