レジ待ちの不満が「稼ぐ機会」に? 米小売大手が実践する面白い工夫:がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)
小売店舗において、レジ作業を見直せば「ついで買い」を促し、大幅な売り上げ増につながるケースもある。そんなレジの在り方について、小売大手Walmartの先進事例などを交えて紹介する。
コンビニでよく見る「一列並び」のメリットとデメリット
一列並びは、日本では欧米の並び方をまねた銀行ATMから始まったといわれており、平成に入ってからの普及です。レジが複数ある場合、並びが1列で並びの先端でレジごとに分かれることからフォーク並びとも呼びます。上から見た時に列がフォークの柄の部分で、レジがフォークの先端の分かれている部分のように見えるからです。
一列並びは国や地域で普及に差が大きい並び方です。日本の小売業においては、コンビニエンスストア、家電量販店、ドラッグストアなどの多くは、この一列並びです。
一列並びは、先に並んだ人が先に処理されるという公平性を重視した並び方です。また、各レジの担当者のスピードのバラツキが大きい場合などにも差が見えにくいことから、採用したばかりの従業員へのプレッシャーが低いこともメリットです。
デメリットもあります。レジ台数が多いと、いつどのレジが開いたかを先頭の客が把握しにくく、レジ担当者が呼びかけてから移動するまでの時間ロスが発生することでトータルの並び時間が長くなります。また、並列並びよりも待機列が長くなることで、購入を諦めて帰る来店客が増加しやすくなります。
また、一列並びは並列並びに比べて割り込みによるクレームが多くなりがちです。これは、店舗ごとの一列並びのルールや先頭位置を理解していない来店客が、無意識にレジに向かってしまうためです。レジまでの並び方を明記し、入口と出口を明確にする運用改善が有効です。ガイドポールやベルトバリヤーの使用も、列の明確化に役立ちます。
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