レジ待ちの不満が「稼ぐ機会」に? 米小売大手が実践する面白い工夫:がっかりしないDX 小売業の新時代(3/3 ページ)
小売店舗において、レジ作業を見直せば「ついで買い」を促し、大幅な売り上げ増につながるケースもある。そんなレジの在り方について、小売大手Walmartの先進事例などを交えて紹介する。
客単価アップを狙うWalmartのレジ戦略
米国では一列並びの明確化で面白い工夫をしている店舗を多く見かけます。
待機列をベルトバリヤーなどで区分する代わりに、低めの商品陳列棚で区分することで「ついで買い商品」を並べる工夫です。
待機列を明確化することでクレームを減らす効果はもちろん、並び列の両サイドに興味を引く商品を並べることで、イライラを解消しながら、ついで買いを狙えるわけです。
Walmart(ウォルマート)やTarget(ターゲット)といった大きな店舗では、チョコレートなどの甘いお菓子が並んでいることが多いほか、都市部のドラッグストアでは、手に取りやすいミニサイズのスキンケア商品や、かわいいキャラクター商品が置いてあることが多いです。列の最初や最後にミネラルウオーターなどの冷蔵ケースを置いている例も時々見かけます。
筆者が直近で目にした身近な例では、化粧品専門店アットコスメストア原宿店も同様の工夫をしていました。そこでは、話題の商品など「なんだろう、これ?」と若い女性の興味を引くものが並んでいました。
いずれにしても、興味を引く商品を並べることで、待ち時間のイライラを解消しながら、ついで買いを狙えるわけです。
一方、食品スーパーマーケットにおいては、あるレジの前はガム、あるレジは線香、あるレジは電池というようにスーパーのレジ前商品がレジごとに異なることから分かると思いますが、並列並びにこの工夫をしているケースはほとんどありません。やりにくいのは、レジが10台あった時にそれぞれの待機列に設置することが難しいからです。
セルフレジの増加は販売機会に変化を起こす
近年、各業態でセルフレジが増加しています。
セルフレジコーナーへの入口は一列並びにしている店舗が圧倒的に多いです。ということは、前述の工夫をすることで「ついで買い」を増やすチャンスでもあります。
日本でもスーパーマーケットを中心にセルフレジが増加していますが、前述の「ついで買い」を狙った工夫をしている店はほぼ見かけません。セルフレジにすることで顧客行動にも変化が起きるので、この機会を逃すべきではないと筆者は考えます。
セルフレジについては次回、より深く掘り下げていきます。
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