AIもいずれ感情を持つ――人間に残された仕事は「不完全さ」にある:新春トップインタビュー 〜ゲームチェンジャーを追う〜(2/4 ページ)
社員一人一人の「デジタルクローン」を作製し、業務の一部を代行させているAIスタートアップのオルツ。多くの業務をAIクローンが代行できるようになった場合、私たちリアルな人間に求められる役割とは一体、何なのか。米倉千貴CEOに聞いた。
人間が本当にやらなければならない仕事とは
――AIクローンとリアルな人間の一番の違いについてクローンの米倉CEOを尋ねたところ「感情や経験の豊かさ」という答えが返ってきました
リアルな米倉CEO: 確かに、生成AIには感情が入っていない。しかし、恐らく2年以内には感情理解が入ってくると考えている。感情を込めてテキストを生成したり、音声出力したりできるようになるだろうという感触を持っている。
そうすると「感情を込めてコミュニケーションしましょう」という領域も人間から奪い始める。そのとき、人間に何が求められるかというと、創造性。創造性といっても、生成AIが作れるようなものではない。自分たちの文脈を超えたアイデア力が人間に求められていくと思う。
――生成AIにも2年以内には感情理解が入ってくる、と。確かにクローン社員にも社員本人の趣味や嗜好など、感情に関わりそうな情報を学習させていますね
米倉CEO: ある種、おもてなしじゃないが、ロボットのようにコミュニケーションされるのは実は非常に不快だと感じる人がいる。ロボットのように話すのは、テクノロジーが稚拙だから。それが成長してくると、より人間的なコミュニケーションを実現できる。人間的なコミュニケーションをどう作っていくかというのは、あらかじめ設計の中に入れておかないと、配慮に欠けたコミュニケーションになるのではないか。
――プレス対応や顧客対応など「これはクローンに任せたい」あるいは「これはリアルな自身が対応した方がいい」といった棲み分けは、何か基準があるのでしょうか?
米倉CEO: 失礼なことを言うようだが、そこは全部クローンに任せたい(笑)
プレス対応やオープン記念の式典への出席などといった予定が多いが、それらは全部作業。作業は本当にやらなければいけない仕事とは違う。本当にやらなければいけないことは、考えることだと思う。
プレス対応などが低い作業などとは考えないが、それは思考とはまた違う。経営者であればあるほど、思考の時間を増やすことはすごく大事な仕事だと思う。思考する意味が人間にはある、ということだと思う。
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