連載
どうなる「楽天経済圏」 モバイルの巨額赤字だけでない、深刻な懐事情(4/4 ページ)
「第4の事業者」として携帯通信サービスへ鳴り物入りで参入した楽天だったが、苦境が続く。中でもオープンAI社の騒動には、相当なショックがあったのではないかと識者は分析する。
ネットスーパーも赤字 光は見えるのか
今後の資金繰りに向け、次は楽天カード株の売却に動くのではないかと決算会見でも質問がぶつけられていました。しかし、親子上場は少数株主の利益を損なう懸念があるとの指摘も多いことから市場の見方は批判的で、むしろ一般的には解消の方向に向かっています。さらに、集客の軸となるポイントサービスとも関連性の高いカード会社まで経営の舵取りの自由を失うことは、楽天経済圏構想の崩壊にも繋がりかねません。ここは慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。
直近のニュースでは、モバイル事業の黒字化遅れによる繰り延べ税金資産700億円の取り崩しと、ネットスーパー事業関連で約160億円の損失計上が発表。2月に予定されている23年度通期決算の発表に向けて暗い材料ばかりが続出しています。とにもかくにもモバイル事業の黒字化こそが、今の資金繰り地獄から抜け出す唯一の道であるわけです。
となるとなおさら、契約者の激増に向けた秘密兵器製造に期待を託している業務提携先であるオープンAI社のいざこざは、あまりに痛過ぎる印象です。この一件を耳にして三木谷社長が流したのは冷や汗ではなく、もはや脂汗だったかもしれません。とにかくモバイル事業に関しては八方塞がりな感が否めない三木谷楽天ですが、2月の決算発表で社長がどのような展望を語るのか、注目して待ちたいと思います。
関連記事
- 起業家、楽天「三木谷浩史」はいかにして生まれたか
楽天を創業し、現在も会長兼社長を務める三木谷浩史氏。綿密な取材をもとに、そのバックグラウンドをまとめたのが山川健一氏の著書「問題児 三木谷浩史の育ち方」だ。かつては不良少年だった三木谷氏はいかにして立ち直り、起業家精神を身に着けたのだろうか。 - 三木谷浩史「AIは全てのエコシステムの中心になる」 グーグル、メタにない強みは?
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、グループを挙げてAI活用に注力することを宣言した。「AIは全てのエコシステムの中心になる」と話し、AI活用によってマーケティング、オペレーション(運営)、クライアントの事業効率をそれぞれ20%上げるよう社員に呼び掛けているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.