どうなる「楽天経済圏」 モバイルの巨額赤字だけでない、深刻な懐事情(3/4 ページ)
「第4の事業者」として携帯通信サービスへ鳴り物入りで参入した楽天だったが、苦境が続く。中でもオープンAI社の騒動には、相当なショックがあったのではないかと識者は分析する。
楽天グループは、23年4月に東証プライム市場へ上場した楽天銀行についても、同じく社債償還資金調達を目的として株式を海外市場で追加売却し、約600億円を確保しました。これによって楽天銀行に対する持株比率は、上場時の63%から49%に下がることになります。ここでもまた、楽天は経済圏の中核ビジネスの主導権を少しずつ手放さざるを得ない状況になってしまいました。モバイル事業で毎期生まれている大きな赤字が、徐々に楽天のビジネス構想そのものに影響を与え始めてきているといえるでしょう。
「プラチナバンド」整備は長期計画を余儀なくされた
肝心のモバイル事業はどうなのかといえば、直近の23年1〜9月決算で2084億円の最終赤字を計上。KDDI(携帯キャリアはau)回線の借用契約におけるローミング(相互乗り入れ)拡大の効果もあって、前年同期の2625億円と比べれば赤字幅は減ったものの、それでもまだまだ巨額レベルの赤字を続けています。一方で、建物内でのつながりやすさが劇的に改善する念願の「プラチナバンド」もようやく23年10月に認可となり、24年度から通信の質改善にも取り組んで巻き返しを図っていくと、依然として三木谷社長の鼻息は荒いのです。
プラチナバンドを手に入れても、それを有効に機能させるためには、専用基地局が必要になります。楽天は総費用を544億円と試算していますが、投資計画は約10年の長期かつ、その後半に投資を集中させる計画です。544億円ならば、先の楽天証券株売却で得た870億円、あるいは楽天銀行株売却で得た600億円から捻出し、早期に整備を進められるのでは――と思うわけですが、そう簡単にはいかないでしょう。
楽天グループにとって最大の問題ともいえる、続々到来する社債償還があるからです。23年度が約800億円、24年度は約3200億円、25年度にはさらに約4700億円もの巨額償還が待ち受けており、今年度の資金メドは立ったものの、来年度以降の対応はまだまだ先が見えていません。三木谷社長はこの巨額償還対応に関して「銀行にコミットしてもらっているので問題ない」と強気の発言をしていますが、念願のプラチナバンドへの投資を後回しにせざるを得ないほど、苦しい状況にあることは間違いありません。
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