「紙の断捨離」わずか3年で半減の成果 エプソン子会社に聞くその秘訣(2/3 ページ)
2024年は電子取引のデータ保存が義務化され、これまで二の足を踏んでいた企業にとってもペーパーレスは喫緊の課題といえる。21年度から本格的に取り組みを始め、絶大な効果を生み出しているエプソン販売の事例を基に取り組みのヒントを探る。
個人単位で枚数を把握 PCのポップアップも
エプソン販売の取り組みでユニークなのは、個人単位で印刷した枚数を徹底的に把握したことだ。部署ごとに使用している枚数を確認し、前年比などのデータも交えながら最適化を進めていった。
どうしてもトップマネジメント層からのメッセージだけでは「笛吹けども踊らず」状態に陥ってしまうことがある。現場自らが使用している紙の量を把握することで、危機感や自分ゴトという認識を持って取り組めるようにした。
その他、オフィス内の複合機に紙の使用に関する注意喚起のステッカーを貼ったり、業務用PCを立ち上げた際にペーパーレスに関するポップアップが出るようにしたりと、各自の意識付けを徹底。現場レベルでは月に一度レポーティングする機会を設け、経営の場でも頻繁に情報共有するなど、スローガンにとどめない工夫を凝らしていった。
その結果、社内で使用した紙の枚数は19年度の1610万枚に対して、21年度は915万枚まで減少。22年度は744万枚とさらに削減し、3年で50%以上ものペーパーレスに成功した。これまで紙の資料が多かった経営会議でも事前資料を廃止。新商品の企画では、これまで承認のために10個弱のハンコを集める「スタンプラリー」状態だったというが、ワークフロー自体を変えたことで負担が軽減した。
ペーパーレスに取り組む中で、副次的な効果も生まれた。福田氏は当時、営業部門のマネジャーとしてプロジェクトに参加。部門ごとに使用頻度が高い資料は異なるものだが、営業部門で特に多かったのが提案資料だ。
提案資料をペーパーレスの観点で精査していて見えてきたのが、営業ごとに資料がバラバラなことだったという。それまで全社で統一したフォーマットがなかったこともあり、スキルが高いメンバーとそうでないメンバ―の間で、資料の格差があった。ペーパーレスを通して、資料作成作業やフォーマットを統一するきっかけが生まれたのだ。
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