小手先のペーパーレス、大義なきデジタル化──あなたの会社も「偽DX」していないか?:「総務」から会社を変える(1/3 ページ)
DXという言葉をいたるところで耳にするが、どうも矮小化されているきらいがあるように思います。DXに取り組んでいるつもりが、実は理解が浅く「偽DX」してしまっていた──そうならないために、必要なことを解説します。
DXの目的は何であるべきか?
岸田総理が「学び直し(リスキリング)」に対して一兆円の投資をすると表明してからというもの、特にDXに関するリスキリングの注目度が高まっています。このDXという言葉は、いたるところで耳にしますが、どうも矮小化されているきらいがあるように思います。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の本来の意味は、Transformation with digital。変革を起こすためにデジタル技術を使うことです。
つまり、デジタル技術を使って、あるべき姿、ありたい姿を実現するのがDXの本質です。しかしながら、デジタルツールの導入やデジタル技術の利用が目的のように捉えてしまっている人も少なくないようです。ここに、DXの矮小化が起きています。
勘違いが多い「偽DX」とは?
デジタルツールを使うことは、デジタライゼーションであり、DXの一つの手段に過ぎません。デジタルツールの導入のみをもってDXとしてしまうのは、「偽物のDX」だと言わざるを得ません。
昨今、多くの経営者がDXに取り組もうと声高に叫ぶのは、単なるデジタライゼーションを実現せよと言っているのではなく「まずありたい姿を構想し、それをデジタルを用いて実現してほしい」という意味であるはずです。経営が目指す方向性や会社の在り方を、技術を活用しながら実現していくことだと理解すべきでしょう。
デジタルツールを導入することにより、有用な副産物が得られます。戦略総務的には、むしろ、「データ」という副産物こそが重要です。デジタル・ツールを使うことでログが残るため、収集・蓄積して、有用なデータとして活用するのです。
データを収集することで、状態を可視化できます。従業員にアンケート取ることなく、厳然たる事実がデータとして浮かび上がります。状態を可視化し、実態を把握できれば、「今後はこうなるのではないか」という予測がつきます。その仮説をベースに、対処することができるのです。
対処した結果が、また、有用なデータになります。効果検証までのプロセスを積み重ねていけば、PDCAを厳然たるデータを基に回せるのです。総務にとって、これは大きな武器です。定性的な感覚値や、なんとなくのアンケートではない、定量化を実現できます。数値で示すことができれば、経営に対しても納得感を持って説明できます。
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