5年後「売上高1000億円」がそれほど難しくなさそうな理由
では5年後の規模感はどのようなものなのか。23年11月期に売上高が303億円に達したマネーフォワードは、すでにSaaS業界の中でも売上高はトップクラス。競合となるラクスが273億円、freeeが192億円、SaaS大手のSansanが255億円といった具合だ。
【お詫びと訂正:2024年1月23日9時32分 初出で「23年11月期に売上高が308億円」としておりましたが、正しくは「23年11月期に売上高が303億円」でした。お詫びして訂正いたします。】
5年後に1000億円から逆算すると、年平均成長率は28%程度。これまでの30〜40%成長にくらべると多少減速する。「直近数年のような40%成長は厳しい」(IR担当)ものの、それでも高成長だ。
背景にあるのは、企業に根付きつつあるDXの流れだ。23年はインボイス制度への対応ニーズ、そして電子帳簿保存法への対応ニーズが大きな追い風となったが、そうした法制度の大きな波が一巡しても、成長に大きな影響はないと見る。
「インボイス制度対応については、若干駆け込み需要がピークアウトしているところも見られるが、当社はデジタルインボイス以外のさまざまなプロダクトを持っている。DX推進でほかのプロダクトが伸びている」(辻氏)
一方でアップサイド要因もある。同社がバックオフィスSaaSの次の柱として期待するフィンテックサービスだ。法人向けのビジネスカード、売掛債権を現金化するファクタリング、請求代行などのサービスを手掛けるが、28年11月期での売上高想定はビジネスカードを含まず60億円でしかない。「ちょっと保守的かもしれない」と辻氏が言うように、化ける可能性もある。
今後、業績のアップサイドとなる可能性を持つのが、決済や企業への資金提供などをテクノロジーと組み合わせて行うフィンテック事業。前年同期比で71%の成長を見せ、26億円規模まで拡大している(決算説明会資料より)
なお、昨今の多くのSaaS企業と同様に、マネーフォワードは社内で開発したソフトウェアを資産として計上し、償却する形を取っている。つまりエンジニアの人件費が償却費に変換されている。23年11月期は、EBITDAが22.6億円の赤字なのに対し、営業利益は63.3億円の赤字。差分の約40億円のうちソフトウェアを含む約17億円が償却費にあたる。
IR担当によると、EBITDAマージンと営業利益率の差は、現状12ポイント程度。今後、人材採用の増加が緩やかになっていくので、ソフトウェア資産計上ペースも緩やかになり、マージンの差が少し縮まる見込みだ。結果、ギャップは10ポイント未満まで縮小する見通し。つまり、売上高1000億円、EBITDA300億円のEBITDAマージン30%の計画だが、そのとき営業利益率は20%超、つまり営業利益200億円超という計算になる。
ただしM&Aを行った際の「のれん」も償却対象のため、M&Aの規模や頻度次第ではのれんが増加しギャップが増大する。EBITDAについてはコミットしているが、営業利益についてはこうした要因で上下が見込まれる。
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