【注目】ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 冬 開催!
TOPPANの社内コミュニケーション奮闘記。あんなことこんなことやってみた。
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【概要】120年の歴史を持つ印刷会社が、アナログとデジタルの双方でコミュニケーションの課題と向き合ってきた奮闘記をお届けする。「事業部長のおごり自販機」設置や「触れ合いロボット」導入など、失敗談も交えながら語る。
新型コロナの影響で減少していた忘年会や新年会に、少しずつ復活の動きがみられるようになりました。宴会では飲酒で気が緩むせいか、嫌がるのに身体を触ったり、下ネタを振りまくったりする上司がいるようで、社労士の筆者は「部下が被害にあった」という話をよく耳にします。
セクハラ規制がどんどん厳しくなっているにもかかわらず、なぜ「飲み会セクハラおじさん」は消滅しないのでしょうか? 今回はセクハラとはどんな行為なのかを改めて確認するとともに、その理由を考えてみます。
事例
Aさん(40歳)は甲社(従業員数80人)で経理課長をしています。昨年の9月、部署に中途採用のB子さん(25歳)が配属されました。A課長が直接、熱心に業務指導を行った甲斐(かい)があり、B子さんはすぐに仕事を覚え、1カ月後には職場の戦力になりました。
1月中旬。会社の新年会で、B子さんは長テーブルの下座に座り、ビールを飲みながら経理課の先輩たちと雑談で盛り上がっていたところ、突然A課長が割り込んできました。そして、「B子さん、こっちにいらっしゃい」と言い、B子さんを連れていくと自席の隣に座らせ、カラのグラスにビールを注いでB子さんに勧めました。お酒が強いB子さんはイッキで飲み干し、A課長は喜びました。
A課長: いやーっ、B子さんは仕事もできるけど、お酒も強いね。
B子さん: 仕事のことはA課長が丁寧に指導して下さったおかげです。
B子さんに頭を下げられたA課長は調子に乗り、急になれなれしくなりました。
A課長: ところでさあB子。せっかく仕事覚えたのに、まさか急に「結婚するから会社辞めます」なんてことはないだろうね?
B子さん: ないです。この会社は働きやすいのでずっと勤めるつもりです。
A課長: よかった。でも彼氏はいるだろ?
B子さん: ええ、まあ……。
A課長: だよね。B子みたいなイイ女、男がほっとくわけがない。
その後もA課長はB子さんのパートナーについて容姿から性格などを執拗に聞きだそうとします。時には卑猥なことまで尋ねてくるA課長に嫌気がさしたB子さんが席を立とうとしても、A課長は腕を取り無理やり座らせます。
A課長: B子、彼氏と別れて俺と付き合わない? 君みたいに色白で目がクリっとしたかわいいタイプが好みなんだ。
B子さん: でも課長には奥様がいらっしゃるじゃないですか。
A課長: そんなの関係ない!
酒に酔ったA課長はさらに調子に乗ったのか、B子さんの手を握り、肩を抱き寄せました。B子さんは抵抗しましたがA課長の力が強く離れることができません。10分後、A課長がトイレに立った隙にその場を離れたB子さんは、宴会がお開きになると逃げるように帰宅し、翌週の月曜日から体調不良で会社を休むようになりました。
1週間後、A課長はC総務部長(ハラスメント相談窓口の責任者)に呼び出されました。
C部長: B子さんから「新年会でA課長からセクハラを受け、そのショックで出勤できなくなった」との相談がありました。
A課長: セクハラだなんて大げさです。酒の席だったのでつい、からかっただけです。
C部長: しかし、B子さんは「A課長と一緒には働けない」とまで思い詰めています。会社としてはこの件について調査をする必要があるので協力してください。
A課長: もし、セクハラと認定されたら、私はどうなるのですか?
C部長: 調査結果によりますが、過去にはセクハラ判定を受けて懲戒処分を受けたり、会社をクビになったりした人もいますよ。
A課長: クビだなんてそんな……。
C部長の言葉にA課長はガックリとうなだれた。
「飲み会セクハラおじさん・おばさん」が減らないワケ
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、職場内や職場外で労働者の意に反する性的な言動により、下記の状態になることをいいます。
(1)労働者が性的な言動に対して拒否するなどの対応をしたことにより、不利益待遇を受けること
(2)職場環境が不快になることで、労働者のパフォーマンスに悪影響を及ぼすこと
セクハラになり得る言動としては、一例として次の行為があります。
性的な内容の発言
- 相手が嫌がるようなわい談をする。性的なことを想像させるような身体的特徴や経験などを話題にする
- 「男のくせに」「女のくせに」「おじさん」「おばさん」などと、性別による差別的な発言をする……など
性的な行動
- 雑誌などの卑猥な記事をわざと見せる
- 執拗に食事やデートに誘う。性的な関係を強要する
- 性的な内容の電話・メール文書を送りつける
- 身体に不必要に接触する
- 女性であることを理由に職場の雑用を強要する(酒席でお酌やカラオケのデュエットを強要する……なども含む)
セクハラは異性間に限らず、同性間での言動も対象になります。例えば男性同士で一方が「どうして彼女がいないの?」「どうして結婚しないの?」などと尋ねた場合、相手が不快になればセクハラになります。
昨今ハラスメントの対策がどんどん厳しくなっているにも関わらず、なかなかセクハラの被害は減りません。この背景には2つの要因があると考えます。
(1)自分の行為がセクハラだという認識がない
事例では、A課長はB子さんに対して悪気はなく、誉め言葉と親しみを込めてコミュニケーションを取ったつもりだったようです。しかしB子さん側からみると「根掘り葉掘り彼氏のことを聞いた上に、身体に触るし、奥さんがいるのに自分を口説こうとする上司」にしか受け取れず、酒に酔ったA課長の豹変にショックを受け、一緒の職場で働くことを拒否しています。
セクハラか否かは、基本的に言動の受け手が判断し、発する側の意図は考慮されません。その理由は、A課長とB子さんは仕事上の関係であり、性的なコミュニケーションを取る必要がないからです。従ってA課長はB子さんに対してセクハラをしたと判断される可能性が高いでしょう。
(2)世論のセクハラに対する認識が分かっていない
かつて「セクハラは悪いことだ」との認識が薄かった日本でも、昨今「女性蔑視につながるセクハラは許さない」とする機運が高まってきました。特にここ数年は企業、政治界、芸能界、スポーツ界からの相次ぐ告発で、セクハラが社会的に非難を受けるようになりました。その影響で、セクハラをした本人や関わった者、セクハラを放置した企業や組織はその後の処遇や運営に大きなマイナスが生じています。
改めて、世の中全体でセクハラに対して加害者側により一層厳しくなっていることを認識し、自分事化して考えていく必要があります。
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