企業はどう取り締まり、対策する?
セクハラの被害者にとって、仕事に対するモチベーションが下がることは想像できますが、風紀の乱れにより職場環境が悪化するため、他の従業員にも影響を及ぼすことが考えられます。最悪の場合、退職者が出てしまうこともあり人材の損失につながります。
また、セクハラを受けたことが原因で被害者がメンタルヘルス不調になり、労災が認定された場合、企業責任として慰謝料を請求される可能性があります。
2006年に改正された男女雇用機会均等法により、男性労働者に対するセクハラも含め、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることが義務付けられました。つまり企業は雇用管理の一環としてセクハラの防止に努め、セクハラに関する問題が生じた場合は対処が必要です。
防止と対処法の一例としては、次になります。
(1)「セクハラは許さない」雰囲気を作る
強い権限を持つトップ(社長など)が「セクハラは絶対に許さない」という姿勢を全従業員に宣言します。周知方法はセクハラについての会社方針を記したポスターやパンフレットなどを掲示する、社内ミーティングで説明するなどが考えられます。
(2)ハラスメント防止規定を作成し、従業員に周知する
セクハラなどのハラスメント加害者に対して懲戒処分を行うときは、就業規則の懲戒規定により懲戒処分の対象になることを明記する必要があります。
(3)ハラスメントに関する相談窓口を設ける
セクハラを含むハラスメントの相談窓口を開設し、被害者、加害者、第三者のいずれからでも相談受付することや相談窓口の担当者などを全従業員に周知します。
また、相談窓口の担当者がセクハラに関する相談を受けた場合、迅速かつ適切な対処が必要なため、相談対応手順などのマニュアルを作成しそれに従って対処するとよいでしょう。
(4)全従業員向けにセクハラ防止研修を行う
セクハラは上司と部下の関係だけではなく、先輩と後輩、同僚同士でも起こり得ます。研修を通じてセクハラの知識と理解を深めてもらうことが大切です。
木村政美
1963年生まれ。旅行会社、話し方セミナー運営会社、大手生命保険会社の営業職を経て2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所を開業。労務管理に関する企業相談、セミナー講師、執筆を多数行う。2011年より千葉産業保健総合支援センターメンタルヘルス対策促進員、2020年より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。
現代ビジネス、ダイヤモンド・オンライン、オトナンサーなどで執筆中。
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