初心者ママの不安、デジタルでこう解決せよ 佐賀県の「子育てDX」(1/2 ページ)
デジタルを活用した子育て支援の取り組みに力を入れる佐賀県では、県オリジナルの機能を追加したアプリを導入するなど、デジタル活用が盛んだ。佐賀県の子育てDXは何がすごいのか――県庁に取材した。
ソニー生命保険の調査で、住民による「子育てのしやすさ」が自慢の都道府県として佐賀県が1位にランクインした。子育て支援に力を入れる自治体は数多くある中、県内外から注目される取り組みはデジタル活用にある。
同県はポータルサイトやSNSでの情報発信に加え、2021年に子育て支援アプリをリリース。マンパワー不足により実現が難しかった先進的な子育て支援の取り組みをアプリの導入で実現したといい、利用者からの評価も高い。
佐賀県のアプリ活用の要諦、狙いを聞いた。
ヒントはフィンランドの「ネウボラ」? 切れ目ないDX支援とは
佐賀県では、ママ向けコミュニティーアプリ「ママリ」を運営するコネヒト(東京都港区)と連携し、オリジナル機能を複数追加した「佐賀県版ママリ」を提供している。情報検索や質問の投稿に加え、地域の保健師などの専門家にアプリを通じて相談するとこも可能だ。
ママリ導入のきっかけは、なんとフィンランド。同県では18年から、東京オリンピック・パラリンピックの事前キャンプ実施などによってフィンランドとの交流を深めてきた。
フィンランドではネウボラという、妊娠期から子どもが小学校に上がるまで、担当の保健師がワンストップで妊婦と家族の支援を行う制度がある。一方日本では「市区町村の保健師への相談や支援が始まるのは主に出産後の検診からであり、妊娠から乳幼児検診が始まるまでの間の妊婦と保健師とのつながりが薄いという課題があった」と、佐賀県男女参画・こども局こども家庭課・副課長の山口直美氏は話す。
同県ではフィンランドに学び、妊娠から出産、産後までを切れ目なくサポートする支援の導入を検討していたが、保健師のマンパワーには限りがあり、フィンランドのように1人の保健師がワンストップで支援を行うことは難しい状況だったという。
そんな中、地域の保健師たちと話し合いながら改善策を探す中で出てきた案がデジタルの活用だ。
「今のお母さん方って、スマートフォンで情報収集しながら育児をしているなと。そこで、アプリを活用した子育て支援の導入を検討し始めました」(山口氏)
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