行政手続きの「めんどくさい」をゼロへ 生成AI用いた「スマホ市役所」の実力は: スマホ市役所(1/3 ページ)
自分も給付金がもらえる対象になる自治体の事業を耳にしたとき、調べる手間や申請の手間を考えて嫌気がさした経験はないだろうか? そんな不条理をデジタルや生成AIの力で解消しようとする自治体が増えている。
政府や自治体の施策で、自分も給付金がもらえる対象になる事業を耳にしたとき、調べる手間や申請の手間を考えて嫌気が差した経験はないだろうか? そんな不条理をデジタルや生成AIの力で解消しようとする自治体が増えている。
岡山県の中南部に位置する人口約7万人の都市、総社(そうじゃ)市。住みやすい街として定評があり、大東建託が発表した「住み続けたい街 自治体ランキング2023」では岡山県で2位と高い評価を得ている。「子育て王国そうじゃ」を掲げている通り、人口の増加率は中国地方でトップクラスだ。
総社市は、デジタル活用に積極的に取り組む自治体でもある。同市は7月、官公庁専用対話型アプリケーション「GovTech Express」の開発提供を手掛けるBot Express(東京都港区)と協定を締結し、「スマホ市役所」を設立した。
スマホ市役所はGovTech Expressをベースとした住民向けサービスで、はがきの郵送や役所に足を運ぶ必要がある面倒な行政手続きをスマホ一つで完結させようというもの。GovTech Expressはすでに約190の自治体が導入しており、住民側は新しいアプリなどをダウンロードする必要がないことや、自治体職員側にとっても追加開発がしやすいプラットフォームが評価されている。
申請はスマホ一つで完結する世界へ
総社市のスマホ市役所のコンセプトは単なる手続きのオンライン化ではなく、住民サービスを「対象者のスマホにプッシュ通知+対象者がスマホ上で確認する」だけで完結させることを目指している。
総社市は市独自の事業として、物価高騰の影響を受ける家計の負担を軽減するため、小学校に入学する前の0〜5歳の子どもがいる家庭に給付金を給付している。この手続きを同市の公式LINEアカウント上のやりとりだけで完了できるようにしたのだ。同市は制度の対象者に郵送で申請に必要な番号を通知し、対象者はその番号をスマホ市役所上で入力することで、給付を受けられる。
総社市の総合政策部長、梅田政徳氏は確かな手ごたえを感じている。
「子育て世代にとって、役所が空いている時間に足を運ぶことは負担になります。実際に制度対象者の90%がスマホ経由で申請してくれています。当事業に対する問い合わせについても、生成AIの技術を活用して答えられるようにしており、こうしたQ&Aのサービスも使っていただいています」(梅田氏)
ちなみに総社市の公式LINEアカウントの登録者数は約2万2000人である。全てが同市の市民ではないものの、実に市の人口の3割近くにあたる人が、スマホ市役所を利用している。
「近い将来、個人情報とLINE上で登録した情報をひも付けられるようになれば、制度対象者に最初から紙ではなくLINE上で通知を送れるようになります。市民がスマホ上の最低限のクリックで給付などを受け取れるようになることを目指しています」(梅田氏)
関連記事
- 「手の内は全て明かす」 ChatGPT導入一番乗り、横須賀市が情報を“隠さない”ワケ
- ChatGPTに「霊長類最強の女性に勝つ方法」を聞いてみたーー自治体がnoteでゆる〜く情報発信する狙い
- ChatGPT、神戸市はどう活用? 職員の負担を半減させたテクニックとは
DXの先進自治体として知られる神戸市。5月に他の自治体に先駆けて、生成AIの利用に関する条例を制定し、6月から対話型AI「ChatGPT」の試験利用を進めている。市では現在、生成AIをどのように活用しているのか。条例やガイドラインはどのように整備していったのか。 - 会津若松市のデジタル実装、「幕末の敗戦」に原点? 歴史に根差す市民性
会津若松市はスマートシティ構想を掲げて10年になる。いち早く自治体のデジタル実装に取り組んだのは、元をたどれば「幕末」にいきつくという。スマートシティ推進室室長の本島靖氏に聞く。 - 生成AIが互いに議論? 国立法人NICTが目指す「フェイクを見破る術」とは
連載「生成AI 動き始めた企業たち」第8回は、日本語に特化した独自の対話型生成AIの試作モデルを開発し、7月に発表した国立研究開発法人「情報通信研究機構」(NICT)を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.