『セクシー田中さん』の悲劇で加速する 日本マンガ実写化ビジネスの海外流出:スピン経済の歩き方(3/8 ページ)
テレビドラマ化した漫画原作者が亡くなるという悲劇が起きてしまった。同じことを繰り返さないために、日本のコンテンツビジネスで求められることとは――。
世界的大ヒット漫画も
ご存じのように、日本では人気漫画の実写化が今や定番コンテンツ化している。一方で「原作の世界観が台無し」「芸能事務所ありきの毎度おなじみのキャスティングでイメージと全然違う」など、コアなファンからは酷評されるパターンが多い。
そういう人気コンテンツに“いっちょかみ”したいオトナたちが骨までしゃぶる、というなんとも日本的なものづくりに辟易(へきえき)した。……かどうかは分からないが、人気漫画家たちがこぞって海外での実写化に踏み切っているのだ。
その代表が、世界的大ヒット漫画『ONE PIECE(ワンピース)』(集英社)の原作者、尾田栄一郎氏だ。
尾田氏はこれまで長く同作の実写化に否定的だったという。しかし、Netflixと組んで実写化に乗り出した。その理由を過去のインタビューでこのように語っている。
「ありがたいことにNetflixは、僕が満足するまで公開しないと約束してくれたんです。脚本に目を通して意見を伝え、原作が正しく映像化されるよう番犬のように振る舞いました」(VOGUE JAPAN 23年9月1日)
結局、尾田氏は実写版の「製作総指揮」に名を連ねて、キャスティングにもかかわり、配信前には「この作品に一切の妥協はありません!!」という直筆レターまで出すほど自信を見せていた。
結果、実写『ONE PIECE』は世界中で大ヒット。公開2週間足らずでなんと視聴時間が2億8000万時間を超え、続編の制作も決定した。この要因は尾田氏が「原作が正しく映像化される」ことに徹底的にこだわり、それをNetflix側も最大限尊重したことで、原作者も納得のクオリティーが実現できたからだ。
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