『セクシー田中さん』の悲劇で加速する 日本マンガ実写化ビジネスの海外流出:スピン経済の歩き方(6/8 ページ)
テレビドラマ化した漫画原作者が亡くなるという悲劇が起きてしまった。同じことを繰り返さないために、日本のコンテンツビジネスで求められることとは――。
海外流出はコンテンツだけではない
分かりやすいのは、数年前から警鐘を鳴らされている「頭脳流出」だ。日本の有能な研究者がどんどん日本企業を辞めて、海外企業へ移ってしまうことが懸念されている。要するに、米国で活躍する大谷翔平選手のように優れた才能のある若者が世界に飛び出してしまうということが、先端技術や学術分野でも起きているというのだ。
もちろん、研究者がより良い環境を求めて海外に行くのは万国共通の現象だ。日本だけが沈没する船から逃げ出すネズミのように研究者が流出しているわけではない。
にもかかわらず「頭脳流出」という恐怖が煽(あお)られるのは、「画期的な研究をしているようなスター研究者」になればなるほど日本を飛び出していることが大きい。海外のほうが自分の研究を正しく評価してくれていると判断し、後者を選んでいるからだ。
この評価の1つはもちろん「お金」である。総務省「科学技術研究調査」によれば、10〜20年度まで日本の研究者に対する処遇(人件費)を含む研究費は、ほとんど変わらずに横ばいだ。しかし研究によっては、海外にいけば処遇はもちろん、研究費などの待遇も改善される。だから「スター」ほど、よりハイレベルで妥協のない研究ができそうだ、と海外を目指す。
漫画家の尾田氏が自身の作品をフジテレビや電通と組んで実写化せず、米国の企業と組んで進めたのも同じような「状況判断」が働いている可能性がある。Netflixなら日本と比べものにならない予算が付くし、原作者へのリスペクトもある。つまり、「よりハイレベルで妥協のない作品づくり」ができそうだと海外を選んだのではないか。
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