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『セクシー田中さん』の悲劇で加速する 日本マンガ実写化ビジネスの海外流出:スピン経済の歩き方(5/8 ページ)
テレビドラマ化した漫画原作者が亡くなるという悲劇が起きてしまった。同じことを繰り返さないために、日本のコンテンツビジネスで求められることとは――。
日本映画やドラマの「衰退」を引き起こす恐れも
さて、このような「成功例」が積み上がってきた中で、人気漫画の原作者の立場になって考えていただきたい。実写化させて欲しいという話が、日本テレビのドラマ制作部とNetflixから同時にやってきた。韓国の制作会社でもいい。原作者がどっちを選ぶのかは明らかではないか。
今回、芦原さんが原作者としての「不満」を訴えたにもかかわらず、日本テレビは「許諾をいただきました」と木で鼻を括(くく)ったような回答したことで、日本中の漫画原作者たちは「明日はわが身」とショックを受けたはずだ。だったら、原作者の意向を最大限聞いてくれるほうに流れるのは当然だろう。
つまり、日本の映画やドラマが、人気漫画の原作者へのリスペクトなしに作品づくりを続けていけばいくほど実写版コンテンツの海外流出が進んでいくということだ。それは、今や「漫画原作」にすっかり依存しきっている日本の映画やドラマにとって深刻な衰退を引き起こす恐れもあるのだ。
「日本映画やドラマのクオリティーの高さは世界からも称賛されている。そんなことで衰退するわけがないだろ」と不愉快になる映画・ドラマ業界の人も多いだろう。しかし、「発明をした人」への敬意を欠くことで、国際競争力を失って衰退するのはある意味で、日本の定番の負けパターンなのだ。
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