「残念なセルフレジ」はなぜ生まれるのか 顧客体験を損なわない方法:がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)
レジ業務にかかる人手を減らすセルフレジ。一方で、使い勝手が悪く、現場の人手を返って増やすセルフレジも多い。顧客体験を向上し、現場の負荷を減らすセルフレジの在り方とは――。
さて、小売業側の目的である省人化という視点で見るとどうでしょう。多くのセルフレジコーナーでは4〜6台に1人以上の従業員が管理画面と、レジで困っている客がいないか、不正行為をする客がいないかといった見る作業に大忙しの様子を見かけます。エラーなどが発生する度にサポートに行くので、なかなか大変な仕事です。
セルフレジは、来店客にとってレジに並ばなくていいという利点はありますが、使いにくい場合は空いていてもセルフレジを使わない来店客は多いものです。
セルフレジで4回も二重スキャン どこに問題が?
とあるチェーン店が改装によりセルフレジを導入しました。筆者が使ってみたところ、15品スキャン作業をする間に4回もダブって登録されることがありました。その都度店員に修正してもらい、最後に「こういうことよくあるんですか?」と尋ねたところ、「そうなんですよね〜。しょっちゅうなります。スキャンしたらすぐにパッケージを裏返してバーコードを隠して袋詰めしてもらえると……」とのことでした。総菜など裏返すのに抵抗のある商品もあるわけですが……。
そのレジは、多くのチェーン店で導入されているレジベンダーのハードウェアだったため、スキャナーなどハードの問題ではなく、ソフトウェアの問題だと考えられます。POSレジシステムにおいて二重スキャンを防止するためには、プログラム上の工夫がいくつも考えられます。
最も基本的な方法は、各スキャンのタイムスタンプを分析して短時間(1〜数秒)内の連続した同一コードは登録しないというものです。このスーパーの場合はここの閾値設定を考える必要があります。
他にも、スキャンごとに視覚的または音声的な確認信号(「同一コードです」など)を出す方法があります。同じコードを続けてスキャンした時に普段より高い音が出るのもこういった工夫です。
同一商品の連続スキャン回数に制限を設ける方法もありますが、これは使い勝手との妥協点を探ることになるのでイマイチです。今の技術であれば機械学習を用いてスキャンのパターンを認識し、二重スキャンを警告することも有効です。
ユーザーインターフェースを明確に設計し、画面で重複を容易に識別できるようにすることも必要です。この際に買い物に不要な情報が画面に出ているのは不適切です。
関連記事
- レジ待ちの不満が「稼ぐ機会」に? 米小売大手が実践する面白い工夫
小売店舗において、レジ作業を見直せば「ついで買い」を促し、大幅な売り上げ増につながるケースもある。そんなレジの在り方について、小売大手Walmartの先進事例などを交えて紹介する。 - 日本のリテールメディアが攻めあぐねる、3つの理由
近年、日本でも小売業者やメーカーが注目する「リテールメディア」。成功する米小売り大手のモデルを模倣するだけでは、成功は難しいと筆者は指摘する。なぜ模倣だけではリテールメディアは成功しないのか――。 - ヤクルト購入率が爆上がり 陳列棚をDX「シェルフサイネージ」の威力とは?
陳列棚の前面につけるコンパクトなデジタルサイネージ「シェルフサイネージ」。実は使い方次第で失敗にもつながる。シェルフサイネージの効果的な使い方とは? - 巨大な店舗で「ダラダラ仕事」 それでも米国小売業が成長できるワケ
なぜ、巨大な店で従業員がダラダラ働いている米国の大手小売業が、キビキビ働いている日本の小売業より生産性が高く成長し続けているのか――長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。 - 日本は周回遅れ? ウォルマートを成長させた「データ整備」と「物流改善」の極意
小売業のDXを図る上で在庫管理におけるデータの活用は欠かせない。ウォルマートの事例から、日本の小売業の成長に必要な要素を浮き彫りにする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.