「残念なセルフレジ」はなぜ生まれるのか 顧客体験を損なわない方法:がっかりしないDX 小売業の新時代(3/3 ページ)
レジ業務にかかる人手を減らすセルフレジ。一方で、使い勝手が悪く、現場の人手を返って増やすセルフレジも多い。顧客体験を向上し、現場の負荷を減らすセルフレジの在り方とは――。
「万引き疑われそう」客がセルフレジを使わない理由
先日、ラジオを聞いていたら「うっかりスキャンするのを忘れて万引きと疑われたらどうしようと思ってしまうので、セルフレジは使わない」という話題で出演者が盛り上がっていました。
2022年にYahoo!ニュースとITmedia ビジネスオンラインが共同で企画した調査でも、使いづらい理由は「システムエラーが起きないか不安」「スキャンをし間違えないか不安」「万引きを疑われないか不安」といった機械の不具合や操作ミスを恐れる回答が多い結果になっていました。
前述した通り、セルフレジ担当者は忙しいです。また、監視業務があるので自然と視線がキツくなりがちです。そういった状況もセルフレジで利用客がプレッシャーを感じる一因なのかもしれません。「レジは笑顔で」という類の標語を掲げる小売業が多いですが、セルフレジ担当者が標語から離れてしまっているのは、業務内容に無理がある一面もあるのではないでしょうか。ITによるサポートも考える必要があると考えます。
食品スーパー「カスミ」のセルフレジ利用促進施策
一方で「使い方が分からない」といった利用経験不足による不安を解消する必要もあります。開店初期で多めにセルフレジ担当者の人員配置をする際や、悪天候で客数の少ない時などに「セルフレジはポイント○倍」などの積極的なインセンティブで誘導を図ることが有効と考えられます。
セルフレジではなくスマホアプリでのセルフスキャンの例ですが、以前、食品スーパー、カスミの新業態店舗「BLANDE」(ブランデ)を視察した際に「雨の日ポイント5倍クーポン」をセルフスキャン利用者限定で配布していました。長い目で見た時に、店舗の省力化を促進する取り組みは重要です。「使ってみると意外と簡単だった」ということは多いものです。
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