「初任給バブル」の裏にある各社の思惑 給料を上げられない企業はどうなる?:労働市場の今とミライ(1/2 ページ)
ここ数年、大卒の「初任給」が高騰している。各社、どういった狙いから賃上げに踏み切っているのか? また、賃上げする体力がない企業はどうなってしまうのか?
30年ぶりの大幅賃上げとなった2023年の春闘に続き、今年も賃上げムードが広がっている。昨年の定期昇給分とベースアップ(ベア)の賃上げ率は、満額回答が相次ぎ、前年比3.58%増の1万560円(連合の最終集計)となった。
そしてここ数年は、大卒「初任給」が高騰している。製造業系の産業別労働組合の幹部は「3年ぐらい前までは、大手企業を含めて初任給の水準はほぼ同じだった。しかし、22年春闘の頃から初任給を引き上げる企業が出始め、23年は一挙に2、3万円を引き上げるなど初任給競争が激化し、初任給インフレの様相を呈している」と、呆れる。
例えば、22年の春闘では大手電機メーカーの東芝、日立製作所、NECの労働組合が大卒初任給の2000円の引き上げを要求した。結果、3社は1万円の大幅増と満額以上を回答した。23年も電機、メガバンクをはじめあらゆる産業で初任給引き上げが相次ぎ、大手企業の大卒初任給は一気に25万円が相場となりつつある。
実際に人事院の調査(令和5年職種別民間給与実態調査)によると、23年4月に入社した東京23区内の大学卒の初任給は約22万2000円(事務系)。前年より3.0%もアップしている。
さらに24年の初任給引き上げ競争もヒートアップしている。ゼネコンの鹿島は24年4月に入社する総合職の社員の大卒初任給を3万円引き上げ、28万円にすると公表。また、大林組も24年4月入社の初任給を28万円に引き上げると発表している。22年4月以降、3年連続のアップとなる。
伊藤忠商事の岡藤正広氏(代表取締役会長CEO)は、1月5日の経済3団体の年頭の会合で「全社員平均で約6%の賃上げ、初任給の5万円アップを労使で検討している」と発言している。
生命保険業界もデッドヒートの様相を呈している。第一生命ホールディングスは、24年4月入社の全国転勤型の総合職の初任給を約4万5000円引き上げる方針で検討している。これまで30時間の固定残業代込みで27万6000円だったが、32万1000円になる。
一方、日本生命も全国転勤型の総合職と営業総合職の職員を対象に初任給を3万円引き上げ、基本給ベースで24万1000円とする方針だ。明治安田生命も基本給で24万円、住友生命も23万5000円に引き上げる。さらに住友生命は25年度は2万5000円引き上げ、26万円にする予定であり、競争は激しさを増している。まるで初任給バブルだ。
業績が厳しい会社もあるだろう。そんな中で、なぜ賃上げに踏み切っているのか。初任給バブルの裏にある各社の思惑を考えてみよう。
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