EVシフトで「トヨタは遅れている」は本当か:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
世界的なEVシフトの中、エンジン不正が騒がれているトヨタグループ。日本は本当に世界から遅れをとっているのだろうか、それとも……。
日本人に求められる「真摯さ」
実はこれは日本型組織が陥りがちな「王道の負けパターン」でもある。1946年4月、米軍が政府に提出した『日本陸海軍の情報部について』という調査報告書がある。この中で日本の敗因が分析されていて、「国力判断の誤り」「作戦第一、情報軽視」とともに「精神主義の誇張」が挙げられている。
神国・日本は絶対に負けない、という強烈な思い込みが軍だけではなく、日本社会全体に広まっていった。結果、「連合国の生産力、士気、弱点に関する見積もりを不当に過小評価」させて、「陸海軍間の円滑な連絡」をさまたげたというのだ。
実はEVシフトも同じにおいがしている。確かに、この話はかなりうさんくさいが、「失速」「既に失敗は確定だ」などとみくびっていると、これまで同様に痛い目にあう恐れもある。
EVシフトや中国メーカーの「失速」を心待ちにするのも分かるが、どんなに「敵」を下げたところで、自分たちが上がるわけではない。まずは、日本の自動車産業が「貧すれば鈍する」を体現するようなセコい不正が続発している、という醜悪な現実を受け入れる。そして、中国のBYDや欧州メーカーの高い実力を素直に認めて、そこから学べることは素直に学ぶという「真摯(しんし)さ」こそが、日本人には求められているのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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