リベンジ消費やインバウンド復活だけじゃない 三陽商会、ワールド、オンワード アパレル各社の「V字回復」戦略:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
コロナ禍が落ち着きを見せ、大手アパレルが業績の回復を見せている。三陽商会・ワールド・オンワードホールディングスの3社に着目し、好調の要因を探る。
オンワードホールディングスのOMOサービス「クリック&トライ」は、同社グループの通販サイト「ONWARD CROSSET(オンワード・クローゼット)」の商品を、最大5点まで店舗に取り寄せて試着できるサービス。どの店で、どのブランドの服が試着できるのかは、ONWARD CROSSETに書いてある。
EC限定商品、店頭にないサイズの商品なども、PCやスマートホンで簡単に取り寄せられる。
各店で全てのブランドが取り寄せられるわけでなく、使いにくい面も残っているが、導入効果が顕著ならば、やがて解消されていくだろう。
なお、同社では「ONWARD CROSSET STORE(オンワード・クローゼットストア)」という、クリック&トライを強化したショップを、21年4月より展開し始めた。旗艦店は千葉県船橋市の「ららぽーとTOKYO-BAY」にある。
こうして見ると、各社ともに顧客が店舗に戻ってきただけでなく、事業の再構築によって業績が好転していることが見て取れる。コロナ禍でやむを得ず店舗や人員を削減したが、アフターコロナに移行する過程では人手不足が顕著となり、以前より少ない人員で売り上げが上がるような仕組みづくりに知恵を絞った。そのため、コロナ前より利益率が向上した。
いわゆるリベンジ消費やインバウンドの回復といった環境の変化のみで、業績を戻しているのではないのだ。
【お詫びと訂正:2024年2月9日午前5時の初出で、オンワードホールディングスのOMOサービスの名前が間違っておりました。2月13日午後2時30、該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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