日本経済にはびこる「下請けいじめ」 巧妙化するその実態:働き方の「今」を知る(2/6 ページ)
ある企業が、自社で販売・使用する商品や製品を発注している下請け企業に対して、不当な値切り行為や支払遅延をしたり、相手側に非がないにもかかわらず、受け取り拒否や返品などをしたりする行為を総称して「下請けいじめ」と呼ぶ。この下請けいじめが、多くのビジネス現場において深刻な問題となっている。下請けいじめに遭わないためには、どうしたらいいのか? その実態と解決策に迫る。
「下請けいじめ」を取り締まる法律がある
「下請法」という法律をご存知だろうか。正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」。文字通り、親事業者(委託側)から下請事業者(受託側)に日々発注されるさまざまな委託業務に関して、親事業者がその優越的な地位を悪用して下請事業者への支払いを遅らせるなど、不当な取り扱いをさせないようにするための法律だ。
「法律の規制がある」と聞くと、そもそも「業務委託」自体が何やらグレーで違法性の高い行為のようにイメージされる方がいるかもしれないが、まったくそんなことはない。自社の業務過程の一部を外部に委託することは、広く一般に行われている。
例えば完成品メーカーが、工場を持つ別の会社に製造を委託したり、ゼネコンがビルの建築を、ITベンダーがシステムの構築を、それぞれ建設会社やシステム会社に委託したりすることはごく日常的な光景だ。
また、家電製品が故障した際に持ち込むのは、家電メーカーから業務委託された修理業者であるし、商業施設の運営会社は施設の警備を警備会社に委託している。
このように、専門的な設備や知見、人材育成や維持管理などが必要で、自社内で保持するにはコストが必要な業務を外部に委託することで、委託側は自社のコア業務に集中し、効率化を図ることができる。むしろ業務委託というシステムがなければ、ビジネスは円滑に機能しないといってもよいだろう。
しかし、下請法のような法律があるということは、それだけ委託側が受託側に不利な条件を押し付けている実態があるからに他ならない。
先述の通り、公取委が22年度に指導・勧告した件数は過去最高(=最悪)の数字であったし、勧告を受けたケースは社名と手口をすべて開示した形で同会Webサイトに掲載(公取委「下請法勧告一覧」)もされている。
中には全国区でCMを流すような大手企業も含まれているのだが、その割には報道されるケースを目にすることは少ない。そもそも下請法自体の認知が高くない事情もあり、委託者側では担当者が下請法違反と知らずに優越的地位を乱用しているケース、また受託者側でも「昔からの慣習だから」と、違反と知らずに不利な条件を受け容れてしまっているケースがあるなど、お互い気付かないうちに違反状態となっている可能性が高いと考えられる。
また下請法で保護される対象は、法人企業のみならずフリーランスとして活動する個人も含まれる。「フリーランス実態調査結果」(内閣官房日本経済再生総合事務局)によると、日本のフリーランス人口は約462万人。コロナ禍の副業解禁などでフリーランス人口は増加傾向とも言われており、わが国で働く人の相当数が認識しておくべき情報といえるだろう。
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