その謝罪、逆効果かも……炎上発生時における「3つの心得」:「炎上」の正しい回避法(1)(1/3 ページ)
ネットが普及し、いとも簡単に「炎上」が起きる世の中になった。炎上の火種を見つけたとき、初動の対応がずさんであるほど、不手際がさらに広く拡散されて悪い評判が広まってしまう。そうならないために、どのように対応すべきなのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏が解説する。
「炎上」とは、主にインターネット上に投稿された情報に対して、多くの批判・中傷などのネガティブな意見が殺到し、爆発的に拡散していく状態を指す。
2000年代半ば頃から社会問題化するようになったが、とくに昨今はネットの発達とコンプライアンス意識や権利意識の向上に伴い、従前であれば取り立ててとがめられることも、発見されることさえもなかったような不適切発言や違法性が疑われる行為が大きくクローズアップされ、発言者や行為者が謝罪に追い込まれるケースも増えているのだ。
例えば、本年11月のわずか1カ月間だけを見ても、これだけの炎上騒動が取り沙汰されている。
11月に起きた4つの炎上
(1) 予約困難な高級レストラン「Sugalabo」のシェフS氏が、営業中の店内において、常連客の顔面にふざけてモンブランのマロンクリームをかける動画が炎上。それをきっかけに、複数の不適切行動や発言を記録した動画がネット上で拡散し、さらなる批判を受ける。
(2) SNSを活用した企業ブランディングや集客、採用方法をアドバイスするコンサルティング会社BEEMが、実際はまったく関与していない飲食店や動物園、ホテルなどの集客・採用成功事例を、あたかも自社実績かのようにWebサイトに無断掲載していることが発覚し炎上。
指摘を受けた同社経営者T氏が「営業時にはきちんと説明している。問題があるなら裁判でも何でも起こせ」と逆上したことで火に油を注ぐ結果に。また炎上過程において、T氏が小学生時代に友人のゲームカードを盗んで中古業者に売り払っていた過去を掘り出され、さらに非難を浴びることとなった。
(3) 帝京大学教授のE氏が、自身が教えるゼミ生の募集にあたり「男女問わず」と公示。応募した男子学生(女性にも存在する名前)に対し「男子には内緒だが、女子は基本的に応募=採用」と連絡した。
面接時に男子だと判明した途端に掌を返し、「女子は無条件で採用などと公式に出したらクレームが来るし学部長からも怒られる。あくまで私的なやりとりだと忘れてほしい」「腹で考えていても表には出せないことなどどこでもある。男女問わず募集しても、秘書は美女だけが採用されたりする。最終的には採る側の権限である」「機会は与えるが結果の平等はない」などの趣旨の発言をした。
一連のやりとりは録音されており、ネット上で公開され「アカハラ(教員の立場を利用した学生へのハラスメント行為。アカデミックハラスメント)では?」と炎上。大学側は即時当該教授のゼミ生募集を停止するとともに、内部調査委員会を発足させ調査を開始した。
(4) 企業と求職者とのマッチングサービスを運営するMeetyの社員から強制わいせつを受けたとして、被害女性がネット上で告発した。
同社社長N氏が即座に対応するも、社員の加害行為を「軽率な行動」と表記したこと、その後一連の経緯を詳細に記したnote記事において、「女性への聞き取り調査の結果、事件性はなく示談が成立した」と投稿したものの、全体を通して感情的な文面と、自社への批判に対して軽い口調で開示請求を示唆する姿勢に批判が殺到し炎上した。
さらには、示談したはずの被害女性からは「Meety社の顧問弁護士から“示談しないと刑事告訴する”と何時間も個室に缶詰状態で脅され心が折れた」「示談に応じなければ、被害告発投稿のせいで発表が遅れたサービスの損害賠償金も払わせると言われた」とのさらなる告発もあり、混迷の様相を呈している。
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