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想定の12倍売れた!? パナソニック「手のひらサイズ」シェーバーが開拓した新市場3分インタビュー(2/2 ページ)

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開発期間は通常の倍 苦労した2つのポイント

――「おしゃれな電気シェーバー」という、新しい市場を開拓したパームイン。しかし、これまでにない形を生み出すまでには、苦労もあったかと思います。

北村: 苦労を話しだしたらきりがないのですが……(笑)。特に大変だった点を、2つご紹介できればと思います。

 まず1つ目が、「大理石」の模様付け。これまでの電気シェーバーは、プラスチック製のメカメカしいものがほとんどでした。でも、デザイン性を突き詰めるなら、電化製品っぽさはなるべく打ち消したい。生命感や、温度感を感じられるものにしたいと思ったんです。それで「石」のデザインを採用したのですが、模様を付けるのは想像以上に大変で……。


大理石の模様にこだわった(提供:パナソニック)

 この模様は「NAGORI」という海洋ミネラルから抽出した新素材を使っています。プラスチックのように加工しやすいのに、石のようなひんやりとした質感が実現できるんですよ。ただ、素材を流し込むスピードや温度、掛け合わせる色の種類や量によって異なる模様ができてしまうので、理想の大理石の模様にたどり着くまで何度も試行錯誤しました。

 もう1つが、デザイン性と高性能を両立すること。どんなにデザイン性が良くても、従来品より性能が劣ってしまうとすぐに飽きられてしまいます。それを防ぐためには「手のひらサイズなのに、しっかりそれる」シェーバーを実現しなければいけません。つまり、従来の商品同様、シェーバーの歯、歯を動かすモーター、バッテリー、制御回路を手のひらサイズに収めないといけないんです。それがものすごく大変でしたね。

――どうやって、小型化を実現できたのでしょうか。

北村: パナソニックに蓄積された知識や経験のおかげです。当社では、何十年も電気シェーバーの性能向上に努めてきました。その結果、高性能を維持しつつ、より小さいバッテリーやモーターで動かせるようになっていきました。

 一つ一つの部品を小さくできる技術はあるので、それが手のひらサイズに収まるよう、パズルのように組み合わせていくだけ。ピッタリハマる組み合わせを見つけるのが大変なんですけどね(笑)。

 デザイン案よりも本体のサイズを数ミリ大きくすれば、特別な工夫をせずとも全ての部品が入るかもしれません。でも、その数ミリの差で使い勝手は大きく変わってきます。だから、時間がかかってでも当初のデザイン案を優先させました。

 通常の新商品だと、開発から販売まで1年半程度のところを、パームインは2年半以上かけているんですよ。

10年先の定番商品を考える

――パームインは、デザイン性と高性能の両立にとことんこだわった商品なんですね。昨年の9月に販売がスタートしましたが、売れ行きはいかがですか。

田中: 24年2月1日時点で、販売台数は6.9万台を超えました。ありがたいことに、想定の約12倍も売れているんです。

――12倍も! ここまでヒットした理由を、どう分析していますか。

田中: やっぱり、新しい市場を作れたことが大きいと思っています。従来の電気シェーバーには”なかった理由”で、パームインを購入いただいている方が多いんです。

――これまでになかった理由とは?

北村: まず、これまで電気シェーバーを使っていなかった人たちが購入してくれているんですよ。男性のヒゲは、年齢を重ねるごとに濃くそりづらくなっていきます。そのため、高性能に特化した従来の電気シェーバーの利用者は、30代以降がほとんどでした。でも、デザイン性の高さやコンセプトから、パームインの購入者は20代の若い方も多いんです。


(提供:パナソニック)

 また、これまでの電気シェーバーを購入するきっかけは「今使っているものが壊れたから」という理由がほとんどでした。でもパームインにおいては、家族やパートナーへのプレゼントとして購入される方や、「持ち運びに便利だから」という理由で2代目として購入される方も多いですね。

 「出張や旅行用に」と持ち運びやすいパームインを購入したけど、コンパクトなのに使い勝手がいいから自宅でも毎日使っている、といううれしいお声もいただいています。

――発売からもうすぐ半年ですが、これからの展望はありますか。

北村: パナソニックではここ数年、「10年先の定番商品を考え、そこから今できることをしよう」という考えのもと、新商品を企画しています。パームインもその考えのもとに生まれた商品です。きっと、近い未来を考えただけでは実現しなかったはず。

 少し遠い未来を考えるからこそ、新しい価値や市場に気付ける。パームインがこれから電気シェーバーの新しい“当たり前”になるとうれしいですね。そのためにも、もっと市場を開拓していきたいと思っています。

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