「大事なのはお金じゃない」 経営者が考えてはいけないこと:高賃金化(3/3 ページ)
経営者であれば「会社の収益をもっと高めて、社員の給与をもっと上げてあげたい」というマインドを持つべき。しかし……。
そうした会社、経営者はマーケティングの本質、すなわち「付加価値の本質」がわかっていません。それがわかっていれば、付加価値を提供したお客さまが心から喜んでくれるので、商品・サービスはさらに売れるようになり、自然な流れで高収益の会社になっていきます。きちんとお客さまのニーズをかなえる付加価値をつくることができたら、お客さまから「その商品(サービス)をもっと欲しい」と言われ、自然に会社は規模拡大していき、社員の給与も自然に上がっていくのです。
給与を上げたいと思っているのに上げられない経営者の会社に、いい人材は定着しません。そうした会社に何とか社員が定着してくれているのは、経営者や上司の人柄、働きやすさ、居心地のよさといった要素のためであり、そうした副次的な要素が理由で働いている社員は、いずれその会社から去ってしまうでしょう。
社員の給与を上げるためには、まずは経営者が「付加価値を利益に変えて、その利益を社員に分配する高賃金化を実現するのだ」という強い思いを持つことが必須条件です。それが高賃金化におけるスタート地点、起点となるのです。
しかし残念ながら、そうした思いと知識の両方を持っている経営者は少なく、一方で、先ほど述べたように「給与を上げたいのに、上げられない経営者」も多くいます。世の中の経営者のほとんどが、この2パターンのいずれかでしょう。
今はどこも人手不足です。給与アップという課題に真剣に取り組み、実際に上げられている会社にいい人材が集まります。反対に、上げたいと思わない会社、上げられない会社には、いくら望んでもいい人材は来ません。経営者は常にそのことを肝に銘じておくべきでしょう。
この記事は、『高賃金化 会社の収益を最大化し、社員の給与をどう上げるか?』(田尻望/クロスメディア・パブリッシング〈インプレス〉)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
著者プロフィール:田尻望(たじり・のぞむ)
株式会社カクシン 代表取締役CEO
京都府京都市生まれ。大阪大学基礎工学部情報科学科にて、情報工学、プログラミング言語、統計学を学ぶ。2008年卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。
大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が、「最小の人の命の時間と資本で、最大の付加価値を生み出す」という価値主義経営の哲学、世界初のイノベーションを生む商品企画、ニーズの裏のニーズまでを突き詰めるコンサルティングセールス、構造に特化した高収益化コンサルティングの基礎となっている。
その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円〜4000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善などを達成した企業を次々と輩出。企業が社会変化に適応し、中長期発展するための仕組みを提供している。
著書に『構造が成果を創る』(中央経済社)、『キーエンス思考×ChatGPT時代の付加価値仕事術』(日経BP社)、『付加価値のつくりかた』『再現性の塊』(かんき出版)がある。
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