「そごう・西武」アジアに増える巨大店舗 大苦戦する国内と何が違うのか?(3/5 ページ)
かつて国内最大の百貨店チェーンだったものの、経営再建・セブン&アイ傘下を経て今や日本国内に10店舗のみとなってしまった大手百貨店「そごう・西武」。その「そごう・西武」の新店舗がいま、アジア各地に続々と誕生していることをご存じだろうか。正念場を迎える日本の百貨店業界にとってのヒントを探る。
香港そごうは投資額1000億円超
台湾のそごう新店舗の規模に驚くなかれ。香港に本社を置く「香港そごう」では、さらなるビッグプロジェクトが進行している。それは、香港啓徳空港跡地の再開発だ。
香港そごうもやはり、かつてそごうの子会社であったが、01年からは香港に本社を置く小売事業者「利福国際グループ」が運営。現在は「そごう・西武」のライセンスを受けて営業しており、23年春時点は香港島(銅鑼湾)と九龍地区に合計2店舗を構えていた。
香港そごうが出店するのは、旧・香港啓徳空港の北側のエリア。同空港は、香港国際空港の開港に伴い1998年に閉港。その後は香港政府によって官民参画による再開発計画が進行しており、一部にタワーマンションや病院、大型クルーズ船ターミナルが完成している。
香港そごうの親会社・利福国際グループは啓徳空港跡北側の再開発に際して土地と開発権を落札。その額はなんと73億8800万香港ドル(現在のレートで約1400億円)だという。現在、利福国際グループはツインタワービル「The Twins 雙子匯」を建設しており、そのうち「タワー1」(20階建て)の地階から9階まで「香港そごう」の旗艦店「香港そごう啓徳双子匯店」を出店させるほか、高層階には香港そごうのオフィスなども入居する計画だ。タワー2の下層階も商業施設となるが、主に若者向け・体験型の店舗とすることで百貨店との棲み分けを図り、相乗効果を狙う考えだ。このほかにイベントが開催できる庭園なども併設される。
香港そごうは新店舗の出店を前に、同じ九龍地区にあった「香港そごう尖沙咀店」を建物の賃貸契約満了に合わせて23年3月に閉店。「The Twins 雙子匯」は23年秋から順次開業しており、そごう部分も24年中の開店を目指して開業準備を進めているという。
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