モスバーガー驚異のV字回復 マックほど値上げしていないのに、なぜ?:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
2023年には営業利益が前年比マイナス98%を記録するなど、危機におちいったモスバーガー。しかし、24年度の第3四半期決算ではV字回復を果たした。なぜなのか?
モスバーガーはマクドナルドなどの競合と比較して、高品質な商品提供に注力し、ベジタリアンやアレルギーを持つ人々も受け入れる柔軟性も兼ね備えていることから、高付加価値なイメージが先行している。
裏を返せば、高付加価値であったからこそ、急激な値上げを繰り返さずとも内部のコスト増を吸収できたと考えられる。利幅が大きい高付加価値な商材は、利幅の小さい安価な商品と比較して値下げの余地が大きい。モスバーガーのメニューには依然として値上げ余地があると考えられ、今後の業績改善にも期待できる状況だと言える。
外食を「輸出」する
V字回復のもう1つの要因は、外食の「輸出」にあるだろう。従来、円安の恩恵を受ける業種といえば、自動車や精密機器のような製造業が一般的だった。
しかし、モスフードサービスは外食という文化をアジアを中心とした海外にも展開することで、外貨建ての収益を確保し、円安の恩恵を享受している。
モスバーガーの海外展開は1991年の台湾に始まっており、強固なブランド認知と顧客基盤を築いている。現在は台湾の他にもタイ、シンガポール、フィリピンに展開しており、健康的なイメージの普及と各地におけるローカライゼーションを経て、定着を目指している。
同社の24年度第3四半期決算における海外売上高比率は約18%に達している。16年に約10%だったことを考えると、業績面においても海外市場を重視している様子がうかがえる。
今後の展望としては、アジア・太平洋地域でのさらなる店舗展開はもちろん、地域ごとの特色を生かした新メニューの開発や、デジタルマーケティングを活用したブランド戦略の強化が予想される。これらの取り組みにより、モスバーガーはグローバルなブランドとしての地位を確固たるものにし、海外売上高比率の拡大を目指していくと考えられる。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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