AI活用で「マネジャーは不要」に?
現在の活用状況に至るまでの経緯として、少し過去にさかのぼります。
90年代後半、米国ではCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理システム)やSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)などクラウド型の営業支援ツールが普及しました。
その後、各システム内に蓄積されたデータを現場の活動自体に生かそうとする動きが興り、2010年頃には現場営業が活用するアプリケーションの統合が議論されるようになりました。そして、営業マネジャー不要論を裏付けるレベルの技術を持つテクノロジーとして、21年後半に「Revenue Intelligence」が登場。これにより、上記でご紹介したような「自動化」が実現しています。
Revenue Intelligenceは、営業活動だけでなく、マネジメント業務の自動化を実現する技術として注目を集めるテクノロジーです。Revenue Intelligenceは、これまで蓄積した豊富な営業データを読み込むことで、現場の営業担当には日常で発生する反復的・定型的な業務の自動化をもたらします。一方マネジャーには、パイプラインにおける案件ごとの成約確率や解約の恐れなど取引におけるリスクやチャンスを報告し、気付きを与える、といった機能を備えます。
このような機能を活用することで、従来マネジャーが行っていた、商談での付加価値向上をサポートするための示唆の提供、案件ごとの指示だし、進捗管理などの業務自体がなくなります。営業担当はマネジャーからの助言がなくてもAIの提案に従って行動するだけで良いので、「マネジャー不要論」が現実味を帯びたと言えるでしょう。
また、AIが学習できるデータ量が増加することも「マネジャー不要論」を推進する一因となります。
従来、画像、テキスト、音声など、異なる形式のデータは人間によってAIが認識できる形に変換する必要がありました。しかしどのような形式のデータでもAIが学習できるようになるなど、周辺技術の開発が進んでいます。これにより、学習に使用できるデータが豊富になり、より正確な分析結果を算出できるようになることが見込まれます。この記事を執筆している23年12月にGoogleの新AIモデル「Gemini」が発表されましたが、そのレベルまで既に開発が完了し、1年後には当たり前になっていることでしょう。
営業においても、データが精緻かつ豊富であれば、組織的に蓄積した営業データを分析し、AIが人間よりも多くの変数を踏まえて分析できます。そのため、これまで改善の余地があった「人」が判断することにおける属人性を乗り越えることができるのです。
複雑かつデータが少なく、勘と経験が左右する場合のマネジメント業務は別として、組織内で繰り返し行われているマネジメント業務は代替することが可能になることが予測されます。
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