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2年分のアポをたった半年で獲得、なぜ? TOPPANデジタルのインサイドセールス改革米国式「BDR」の実力(1/3 ページ)

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新規受注額を1年で4.5倍にした「スクラムセールス」

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スクラムセールスとは、全員が全顧客・全プロセスに対応できる体制をつくり、各商談先や顧客の担当を明記せず、全員で全顧客のあらゆる課題の解決に向き合うという営業スタイルだ。スクラムセールスにより新規受注額を1年で4.5倍にした株式会社cocoの事例を紹介する。

 市場の成長と競争激化によって、新しい顧客や商談機会を継続的に創出する難易度が上がっています。このような中、米国では2010年代から、ターゲットとなる企業群へのアプローチを事業開発的に行う「BDR」(Business Development Representative)という営業部隊が主流になっています。

 「BDR」はアウトバウンド型で、電話、メール、SNS、イベントなどさまざまな手法を活用し「ゼロから商談機会を作る」営業部隊です。従来のコールドコール的なテレアポと違い、ターゲット企業の公開情報や過去の自社とのコミュニケーション履歴を適切に読み取ることで課題を把握し、仮説を構築した上でアプローチを行う特徴があります。

 日本でもコロナ禍を経てオンラインでのワークスタイルが一部定着し、営業活動についてもオンラインを軸にしたマーケティングやインサイドセールスが浸透し始めています。このような中で米国にていち早く広まった「BDR」は、時流性のある効果的な営業手法として、取り入れる企業が増加傾向にあると言えるでしょう。

 TOPPANデジタルは、22年12月から「BDR」の立ち上げに取り組み、わずか3カ月で体制を構築。その後の半年間で過去2年間のアポイント数を上回る成果を出すことに成功しました。

 TOPPANデジタルは約1年間でどのような歩みを経てきたのか。同社ICT開発センター課長・原井隆浩氏と、同事業推進センター課長・日高常博氏に、グーグルジャパンで営業統括部長、freeeで営業統括役員を歴任したMagic Moment代表 村尾祐弥が聞きます。

リードは「展示会頼り」を脱却したい BDR立ち上げの背景

村尾: TOPPANデジタルが行った「専任の営業担当がいない中で、新プロダクトのBDRを短期間で立ち上げる」取り組みは、新たな製品・サービスの営業活動に腐心している企業のご担当者様に参考になる取り組みだと考えています。

 まずは「BDR」を担うチームを立ち上げるまでの経緯についてお聞かせいただけますか?

原井: TOPPANデジタルの前身である凸版印刷では、長らく受注型の事業をメインに行っていました。全社的にデジタルシフトを掲げる中で、私は17年よりデジタルトランスフォーメーション事業の推進役を担っています。

 その傘下の取り組みの一つである、売り切り型でない継続型・持続型のSaaSプロダクトを提供するプロジェクトの中で、オンライン校正システム「review-it!」(レヴュイット)のプロダクト責任者として新規事業の企画・開発を担っています。これまではスクラム開発やUXの向上など、プロダクト開発のモダン化に取り組んできましたが、SaaSのビジネスモデルの成功にはマーケティング・セールス・カスタマーサクセスを含めた事業部全体の最適化が不可欠と考えたことから、BDRをはじめとした販売部門との連携を行っています。


(提供:TOPPANデジタル)

日高: 私は原井とは真逆で、販売軸でのキャリアを歩んでいます。今までは“お客様第一主義”で、ご要望にお答えするものを作るアカウント営業をメインとしてきました。現在は、DXの変革の中で、別のSaaSプロダクト、家電の取扱説明書や保証書を一元管理できる「IEMANE」(イエマネ)の立ち上げに参画しています。これはB2Bモデルで、マンションを管理している不動産会社様などが顧客候補になるサービスです。

 当社グループの主たる販売チャネルはアカウント営業部門であり、これまで特定のプロダクトを顧客に提案・販売する販売方法をあまり取ってきませんでした。そのため、プロダクトのターゲットとなる顧客を持つ社内の営業担当に “社内営業”し、得意先に積極的に提案してもらうためのプレゼンを行う必要がありました。そこを突破しても、アカウント営業自身が抱える案件の優先順位もあるので、得意先に提案するかは営業次第。事業主体ではコントロールできないという歯がゆい思いがありましたね。

村尾: 大きな企業では売れる製品・サービスが多数存在する一方で、開発・製造・販売は別部署であることは珍しくありません。こうした場合、販売を担う営業部門は売り上げと利益率が良い主力製品・サービスに注力し、それ以外はお客さまからの引き合いがない限り積極的には提案しないケースは往々にして存在しますよね。

 これは社内で「価値の理解」が浸透していないことに起因すると考えています。顧客に価値を提案する際に、複数の製品・サービスを組み合わせて提案を行いますが、そのラインアップの中で販売実績や過去事例が少ないものは、営業自身が「提供価値」のイメージをつかみづらい傾向にあります。顧客へ価値を伝える提案が難しく、営業が理解に努めようとしない結果、積極的に売らないといった悪循環に陥ってしまう、という状況は多くの企業で起こっていると思います。

 そうした状況を打開するために「BDR」が与件整理と課題の抽出を行うことで、製品・サービスの提案価値について「どのような顧客に求められるか」「どのような活用方法ができるか」という仮説を立てるプロセスの中で、前例がない製品・サービスであっても理解が進み、顧客へ訴求すべき価値を見いだすことにもつながります。

 TOPPANデジタル様で「BDRの立ち上げ」を決断されたのは、他にも理由があったのでしょうか?

原井: マーケティング由来のインバウンドに頼らずに直接的なアプローチができる点に魅力を感じたことも1つの理由です。

 「review-it!」は限られた予算内でのWebマーケティングなどの手法では、認知獲得するほどの出稿量を作ることは難しいことに加え、バナーやテキストで価値を伝えることが難しいという課題がありました。このサービスによって自動化する校正作業は、“人間がやるのが当たり前”という認識が強い。そのため検索してくれる見込み客がそもそも少ないので、私たちからアプローチを仕掛けていかなければいけない状況でした。

 これまでは展示会で獲得した数百件のリードをもとにセールスしてきたのですが、局所的にリードが増えるため案件推進が滞ってしまったり、熱量が高い段階でご連絡できず機会を逃したりすることもありました。自分たち主体でリードをコンスタントに増やす方法を模索する中で、BDRは有効なのではないかと考えたという流れです。

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