総勢500人超がUSJで「駅伝」! 賃上げだけじゃない、USJの「スゴい」人材施策(4/4 ページ)
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を運営するユー・エス・ジェイが3年連続で賃上げをする。同社では賃上げ以外でも、働く人の満足度やエンゲージメントを高めるさまざまな施策に取り組んでいる。その狙いについて取材した。
金銭面・非金銭面を合わせた施策を
トータルリワードとは、金銭的な報酬だけでなく、非金銭的な報酬も合わせて総合的に働く人の満足度やエンゲージメントを高めることを指す。実際に先述したUSJ駅伝大会は、パーク内をクルーが走るという物珍しさだけでなく、クルー同士が職責や年齢を超えて親交を深めたり、旧交をあたためたりする機会になっているという。
現存するクルーだけでなく、採用にも好影響を与えている。今回初めて参加した1人は、もともとテレビ番組でUSJ駅伝大会を知り、ぜひ自分もパーク内を走ってみたいと思いクルーに応募。コロナ禍をまたいでようやく開催となった大会に参加したことで、より働く意欲が高まっているという。
全社横断プロジェクトが活躍
パーク内で働くクルーだけでなく、オフィスクルーの働きやすさの施策にも取り組む。コロナ禍では、もともと17〜18年ごろからリモートワーク制度を段階的に導入していたこともあり、スムーズに移行ができた。
コロナ禍前から取り組んでいたオフィスリニューアルは、23年に一段落。社内横断でメンバーを集めた「TAGプロジェクト」が主体となりながら、人事やマーケティング、IT部門など各部門からもそれぞれ主体的に意見を出し、部門ごとに毛色が異なるオフィスへとアップデートした。
例えば、レストランなどを担当するフードサービス部のオフィスのケースを見てみよう。現場のオペレーションを話し合うことも多いことから、座りながらの会議と立ちながらの会議の双方に対応できるよう、高さが変更可能なテーブルを用意している。マーケティング部門のオフィスは、リラックスしながらクリエイティブなアイデアを出しやすいように緑基調のカラーリングにした。
その他、TAGプロジェクトでは、負担の高まりやすい傾向にある現場リーダー層のエンゲージメントを向上させたり、特定部署にフォーカスしてお互いを褒(ほ)める文化を定着させるためのツールを導入したりと、まさに全社的な取り組みを続けている。事後的にモニタリングする中で、数値の改善もしっかり見られているという。
世界的なテーマパーク運営に関するレポートである「Theme Index Museum Index 2022」によると、東京ディズニーランドや東京ディズニーシーなどの並居る競合を抑え、日本で最も来場者が多いテーマパークとなっているUSJ。その背景には、さまざまなコンテンツとのコラボもさることながら、こうした働き手に寄り添った数々の施策がある。
著者プロフィール:鬼頭勇大
フリーライター・編集者。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。
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