3月16日、北陸新幹線開業でJR3社の意向を探る:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
JRグループが2024年3月16日にダイヤを改正する。JRグループのダイヤ改正は、相互直通運転の相手先、乗り継ぎ可能な大手私鉄やローカル私鉄まで影響が及ぶため「日本の鉄道のダイヤ改正」ともいえる。そして今回の大きなトピックは「北陸新幹線金沢〜敦賀間延伸開業」だ。
JR西日本、近くなって遠くなる金沢・能登
京阪神から見て、北陸方面はどうなるか。新大阪〜敦賀は北陸新幹線とは関係ない。新大阪〜福井、金沢、富山を比較しよう。
新大阪〜福井間は、特急「サンダーバード」に乗り、敦賀で北陸新幹線に乗り継ぐ。所要時間は最短で1時間40分。従来のサンダーバード直行便の最短所要時間は1時間43分。運賃は敦賀乗り継ぎで7290円。サンダーバード直行便は6140円。所要時間は3分しか短縮できず、運賃は1150円も高くなり、エスカレーター2本分の移動が発生する。いささか理不尽である。
新大阪〜金沢間もサンダーバードに乗り、敦賀で北陸新幹線に乗り継ぐ。所要時間は最短で2時間5分。これは敦賀駅で8分の乗り換え時間になった場合だ。私が体験乗車で試したときは5分を切る程度だった。ギリギリだ。従来のサンダーバード直行便は2時間27分。運賃は敦賀乗り継ぎで9410円。サンダーバード直行便は7790円。所要時間は22分短縮で、運賃は1620円も高い。敦賀乗り継ぎは2時間20分前後が多く、サンダーバード直行も2時間40分が多い。所要時間の差はだいたい20分程度。運賃+料金の1620円の差は妥当だろうか。割引きっぷがほしいところだ。
沿線自治体からは「サンダーバードの福井乗り入れ、金沢乗り入れ継続を」という要望はあったけれども、聞き入れられなかった。これは、JRとしては新幹線に乗ってもらいたいし、平行在来線を経営分離するという建前もある。平行在来線側としても、JRの特急を受け入れた場合に車両使用料を払う必要があり、それに見合った乗客数が得られるかが未知数。さらにJR貨物の列車が通過する路線では、列車の運行本数の比率で線路維持費を案分するため、余計な列車を走らせたくない。
しかし福井県の平行在来線会社「ハピラインふくい」の時刻表には、快速列車が設定されており、敦賀〜福井間で朝は2往復、夕夜間2.5往復だ。運行本数が少ないとはいえ停車駅がサンダーバードとほぼ同じ。通勤通学用と思われるけれども、福井駅18時47分発のハピライン福井快速に乗ると、敦賀でサンダーバード44号に乗り継ぎ可能で、所要時間は2時間9分。運賃+料金は5840円だ。北陸新幹線利用と同じくらいの所要時間で安い。
福井〜敦賀間は北陸新幹線で約15分。ハピライン各駅停車で約50分。快速で38分。日中の快速を特急サンダーバードやしらさぎに接続してもっと増やしても良さそうだ。
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