外国人は「ジブリパーク」を称賛するのに、なぜ日本人は「高い」と感じるのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
外国人観光客に人気の「ジブリパーク」だが、国内では「高い」などの理由で反応がイマイチのようだ。今後ジブリパークが生き残るために、筆者が提案することは――。
ジブリパークの事業主体は愛知県
ご存じない方もいらっしゃるだろうが、実はジブリパークの事業主体は愛知県。「愛・地球博記念公園の魅力と価値を一層高め、子どもから大人まで県民のみならず広く国内外からの来園者に楽しんでもらえる公園とするため」(愛知県の公式サイトより)という目的の「公園事業」だ。
愛知県がパークの事業主体として施設を整備し、必要な行政上の許認可手続きを行う。そして、ジブリが事業全体の企画監修などを担い、ジブリと中日新聞社が共同出資した株式会社ジブリパークが管理・運営している。
それがよく分かるのが、目標来場者数だ。ジブリパークは5エリアが全て開業した際の年間想定来園者数を約180万人と見積もっている。ほぼ同じ入場料をとるディズニーランドが1200万人、としまえん跡地の施設でも200万人としている中で、ずいぶん弱気じゃないかと思うだろう。
ただ、ジブリパークはあくまで「県立公園内の魅力を高める事業」なのでこれで十分だ。大阪・万博記念公園内の自然文化園がコロナ前の18年に約238万人を記録しているので、このあたりをベンチマークにしているのだろう。ちなみに、自然文化園の入園料は大人260円、小中学生80円だ。
このような「ジブリの公園事業化」は自治体的にもありがたいし、過度な商業主義に走らず自然保護を目指すジブリの理念的にもマッチしたものなのだろう。ただ、長い目で見ると、ジブリにとっては非常に大きなマイナスだと思っている。ディズニーのように「ブランド」を確立できないからだ。
ディズニーランドがなぜ世界でこれだけ人気を誇っているのかというと、自分たちで「価値」を下げなかったからだ。「みんなで楽しんで」「みんなで愛して」とディズニーランドを安い入場料で開放して、キャラクターグッズの安売りに走っていたら、恐らく今のような地位を確立していない。ラグジュアリーブランドなどもそうだが、「豊かな人でも貧しい人でも誰もが楽しめる商品やキャラクター」は最初のうちは親しまれるが、時間が経過すると大衆に飽きられて消えていく。「価値」を下げすぎてしまうことで、誰も魅力を感じなくなってしまうからだ。
さて、そういうブランドビジネスの大原則を踏まえて、ジブリパークを見ていこう。これから宮崎監督が世界で評価されようとも、ジブリ作品の人気が高まろうとも、ジブリパークの「価値」はある程度までいったら頭打ちにならざるを得ない。
愛知県の「公園事業」なので、低価格で提供しなくてはいけない。ディズニーのように「これから“君たちはどう生きるかエリア”の増設工事をするので、チケットは値上げします」なんてことはできない。「みんな」が楽しめるもの、「みんな」が利用できるような低価格で提供しなくてはいけないからだ。実際、愛知県の大村秀章県知事も22年4月28日の記者会見で「公園事業なのでお手頃な価格で多くの方に楽しんでいただきたい」と述べている。
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