日本のアニメ、「配信バブル」は崩壊するか? かつてのブームとの決定的な違い:エンタメ×ビジネスを科学する(2/2 ページ)
日本のアニメが大胆な投資に出られるようになった背景には「配信バブル」がある。これはいつまで続くだろうか?
日本のIPビジネスにおける進化
また、集英社や講談社らアニメ原作コミックを持つ出版社が紙・電子の両面でビジネスを強化しており、作品タイトルの人気向上に映像・原作コミック両面から取り組めるようになった。
東宝も国際展開に本腰を入れ始めている。子会社であるToho Internationalから米国市場に配給した『ゴジラ-1.0』はアカデミー賞視覚効果賞を受賞。23年には国際部の事業を分社化する形でTOHO Globalを設立し、海外展開を強化し始めている。
特に東宝はアニメを映画・演劇・不動産に次ぐ「第4の柱」に位置付けており、国内市場でも存在感を増しているアニメ事業を、より一層強化するとみられる。このように、国・地域を問わず届けられるインフラが整っており、また、日本の事業者自らコントロールできる範囲が広がっていることから、00年代と同様の失敗は繰り返されないと考えられる。
10年後、20年後の成長に必要なこと
市場目線、消費者目線ではどうか。今の海外市場の人気を支えているのは、視聴者が子どもから大人に成長する過程でアニメに触れていた世代だ。主に子どもでも楽しめるタイトルが放送されていたアニメブーム当時に日本のアニメに触れ、成長とともに徐々に対象世代が上の作品を見るようになった層が、今の海外市場を支えている。
よって、10年後20年後の日本アニメファンを増やすためにも、今の子どもたちに需要のある作品を世界市場で配信する必要があるだろう。それは必ずしも新作である必要はない。世界中で配信実績のある『ドラゴンボール』や『ポケモン』『ドラえもん』『NARUTO』など、王道かつ定番の作品の露出を絶やさないことが重要である。
これまでの内容を整理すると、以下のようにいえる。
- 昨今のアニメ産業の成長は、支払い能力のある青年以上を対象としたアニメの人気増によるものと考えられる
- この成長を維持するには、将来の顧客の囲い込みと、世界中の子どもたちに需要のある作品が常に配信ラインアップに加えられている状態を維持し、日本アニメに触れる場面を確保する必要がある
日本のアニメ産業市場はグローバル市場での需要の増加・配信インフラの整備もあり、2兆円を超え、3兆円市場も見える規模に成長している。日本を代表する産業として3兆円、4兆円とより高みに至ることを期待したい。
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