「サンマが食べられなくなる」は本当か よく言われる要因は3つ:魚ビジネス(3/3 ページ)
漁業の世界では、「魚が獲れなくなった」という話をよく耳にします。ここのところ続いている「サンマの不漁」については……。
さて、ここまではサンマの話でしたが、魚の資源変動について今一度まとめましょう。魚の資源変動のメカニズムは、多くの場合、正確には分かっていません。ただ、よく言われる要因は次の3つで、それらが関連して起こるというのが一般的な見解です。
(1)海洋環境の変化
水温や海流、それに伴うプランクトンや他の生物の増減など、海洋環境の変化は魚の資源量に影響を与えます。
(2)漁獲による影響
人が魚を獲ることで魚が減り、子孫を残せなくなることで資源量が減ります。ただし、魚は自然に再生産されるため、一定の親を残せれば影響はごく少なく済みます。
(3)人の手による環境変化
土木工事などにより水の循環が妨げられたり、森林の伐採で海への栄養が行き届かなくなったり、水の浄化をしすぎて栄養がなくなったりといった例。人の活動によって環境に変化が生じれば、魚の資源量にも影響が生じ得ます。
ここで覚えておいていただきたいことは、偏った見解を言う人には注意が必要だということです。そこには、自らにとって有利な見解に持っていき、自らの利益になる展開にする意図があることも多いのです。
例えば、「魚がいなくなったのは、漁師が魚を獲りすぎたからだ」という人がいます。それには、漁師を弱体化させることで流通の主導権を握る、または海を別のことに利用しようとしている勢力が加担していることもあります。あるいは、工事や獲りすぎで魚が減ったのに、気候変動のせいにして責任を逃れたい人もいるでしょう。
魚の資源変動に関する情報は、このようにドロドロしたフィルターを通して伝わってくることを覚えておきましょう。
この記事は、『魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養』(ながさき一生/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
ながさき一生(ナガサキイッキ)
おさかなコーディネータ。株式会社さかなプロダクション代表取締役。一般社団法人さかなの会理事長・代表。東京海洋大学非常勤講師。
1984年、新潟県糸魚川市にある「筒石」という漁村の漁師の家庭で生まれ、家業を手伝いながら育つ。2007年に東京海洋大学を卒業後、築地市場の卸売企業に就職し、水産物流通の現場に携わる。その後、東京海洋大学大学院で魚のブランドや知的財産の研究を行い、修士課程を修了。
2006年からは、ゆるい魚好きの集まり「さかなの会」を主宰し、「さかなを捌きまくる会」などの魚に関するイベントをこなす中で、メディアにも多数取り上げられる。2017年に「さかなプロダクション」を創業し独立。
食としての魚をわかりやすく解説する中で、ふるさと納税のコンテンツ監修や、ドラマ「ファーストペンギン!」の漁業監修を手がける。水産業を取り巻く状況を良くし、魚のコンテンツを通じて世の中を良くするため、広く、深く、ゆるく、そして仲良く、仲間たちと活動している。
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