「部下への配慮」と「成果」の板挟み……営業マネジャーの悩みをほぐす、3つの視点:営業コミュニケーション大解剖(2/2 ページ)
部下への合理的な配慮と、求められる成果の間でジレンマを抱える営業マネジャー。どのようなことを考慮すれば部下に適切な配慮を提供できるのか。
加速・減速の度合いとタイミングを具体的に調整する
メンバーたちは、さまざまな事情を抱えながらも、辞めずに働き続けることを選択している、というのは忘れがちながら大切なポイントです。相談を受けたときに「なるほど、家庭を優先して仕事はいったんそこそこにする、というわけか」などと早合点してしまわずに、どのくらいペースを抑えたいのか、何ならできるのか、何が絶対にできないのか、という点をつぶさに聞き取ることが大切です。
「可能な限り頑張りたい」「これまで通りやるがこの時間だけは働けない」「得意なことに集中して貢献度は維持したい」「いったん仕事は最小限に抑えたい」など、さまざまな声が聞こえてくるはずです。やがて本調子に戻ってくるときを見越す意味でも、ある程度の時間軸をおいた上で何を頑張り、何を頑張らないのかを具体的にすり合わせておきましょう。
このことは、単にその後の調整に必要な重要な情報を得るという側面にとどまらず、メンバーが「ある範囲では引き続き活躍を期待されている」と感じるよいきっかけとなります。
期待値はこれまで以上に明確に示す
ここまでは働き方の調整に際する心がけの話でしたが、忘れてはならないのは営業マネジャーとしてチームの成果を高めることです。働き方に配慮しないことはもちろん問題ですが、その一方で配慮することに重きを置きすぎたがゆえに成果が上がらなかったり、他のメンバーの負担が高まり組織力が弱まったりすることは本末転倒です。
メンバーの働き方に対する配慮も、あくまで組織力を弱めないためのもの。さまざまな配慮をした上でも、成果を求める姿勢は明確に示した上で、求める成果の範囲や水準で調整をするようにしましょう。数字目標がある営業マンであれば、担当範囲と目標数値を伴って減らすといった調整はやりやすいですが、成果が測りづらい、これまで期待値を明示してこなかったオペレーション(営業事務など)のメンバーに対しても、これまで以上に具体的な期待値を示すように心がけましょう。
このことは、あなたのチームの成果を管理するためだけでなく、他のメンバーからの心象を調整しつつ、当の本人も気後れせず安心して働くために必要なことです。
おわりに
メンバーが働き方への配慮を求める背景にはそれこそ多様な事情があるため、何かを一概に語ることもまた、難しいというのが本音です。とはいえ本記事では、そんな中でも最低限ここだけは共通して心にとめておきたい事項をまとめました。
制約があるメンバーを抱えながらも成果を出し続けられるかどうかは、メンバー個々人のモチベーションはさることながら、やはりマネジャーのコミュニケーション手腕にかかっていると言えるでしょう。これはとても大変なことですが、本記事が少しでもお力になれると幸いです。
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