「部下への配慮」と「成果」の板挟み……営業マネジャーの悩みをほぐす、3つの視点:営業コミュニケーション大解剖(1/2 ページ)
部下への合理的な配慮と、求められる成果の間でジレンマを抱える営業マネジャー。どのようなことを考慮すれば部下に適切な配慮を提供できるのか。
令和は多様性の時代――。そのようにうたわれるようになって久しいですが、すでにキャリアを積んだ営業マネジャーの皆さんの多くは、新たな時代への順応にまだまだ戸惑うことも多いのではないでしょうか。
実際に筆者の周りの営業マネジャーの方々も、営業チームとして求められる成果は厳然として変わらない(厳しくすらなっている)なか、チームメンバーが求める多様な働き方にも対応すべしという組織からの2方向の圧力の間でジレンマを感じているように思います。
仕事に全力投球できないさまざまな事情(健康管理や介護、育児)を抱えたメンバーに、合理的な配慮を提供することは、もはやマネジャーとしての責務であり議論の余地はありません。
難しいのは、制約のある中でメンバーの貢献度を最大限引き出すことです。このような対応は苦慮を伴うものの、うまくメンバーの大変な時期や状況に寄り添うことができれば、彼らを完全に失わずに済むだけでなく、長期的にはより絆とコミットメントの強いチームを作る機会にもなり得ます。
では、どのようなことを考慮すれば適切な配慮を提供できるのでしょうか。当然状況によるところは大きいものの、本記事では指針となる考え方を示したいと思います。
筆者プロフィール:水嶋 玲以仁 グローバル・インサイト合同会社 創設者兼CEO
インサイドセールスの実務全般について、20年に及ぶ経験を持つ。そのうち16年間は、世界有数のIT企業でBtoB及びBtoCのインサイドセールス、営業チームの発展と管理業務に携わる(Dell で7年、 マイクロソフトで6年、Googleで3年)。
その後、JTB、NEC、ソフトバンクなど日本企業のコンサルティングの実績を持つ。
著書に「インサイドセールス究極の営業術」(ダイヤモンド出版)、「リモート営業入門」(日経文庫)、「実践営業デジタルシフト」(日本経済出版)。
部下の貢献を長い目で、未来志向に考える
多くの場合、チームメンバーが働き方に配慮を求める背景となる事情は、長くとも10年は続かないような一時的なものです。あくまで経過的な措置として捉えれば、より多くの選択肢を提供できるはずです。
ここまでは当たり前のことですが、つい気にしてしまうのが、メンバーの「これまでの」貢献度です。十分に成果を発揮してきたメンバーにはある程度の配慮を許容する心持ちになりやすい一方、まだ未熟なメンバーやここまで育ててきて、ようやくこれから成果を出してもらうことを期待していたメンバーからの申し出には、つい心のどこかでガックリ感じてしまうのが人情というものですね。
とはいえ、ここでは未来志向になることが大切です。あなたが懸命に調整した成果は、これから先の未来に果実となって返ってくるもの。配慮を申し出た当のメンバー自身も、若ければ若いほど、未熟なままにキャリアを減速させることを恐れているはずです。彼らの望みを受け止めながら、マネジャーであるあなたが長期的な期待を示すことは、メンバーらの「大変だけど、なんとかやれることは最大限頑張ろう」「いつか万全の状態になったら、またここでしっかり頑張ろう」という気持ちを引き出す重要なトリガーです。
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