物流2024年問題で叫ばれる「多重下請撤廃」 それでも“水屋”がなくならないワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
物流の「2024年問題」がいよいよ本格化していく。全日本トラック協会が「多重下請構造」について「2次下請までと制限すべき」と提言しているが、筆者はそう簡単になくならないと考えている。なぜかというと……。
意味のない法改正
例えば、政府は「多重下請」の弊害を是正するとして、元請け業者に取引管理簿の作成を義務付けるというが、管理簿をつくったらピンハネがなくなるわけではない。「抜け道」はいくらでもある。つまり、米国のように法律で再委託を禁止するなどしない限り、中小零細の運送会社はあの手この手で「多重下請」を水面下でこっそりと続けていくのだ。
なぜそんなことが言えるのかというと、歴史の教訓だ。
実は日本では明治時代からさまざまな業界で「多重下請構造」が問題になっていた。時に末端の人々の命が奪われるような悲劇も起きて、そのたびに「多重下請を制限すべき」という声が盛り上がっていた。
しかし、なかなか多重下請構造はなくならない。
先ほどの「水屋」と同じで、「仕事がない個人事業主や営業力のない零細事業者を救うためには必要な商習慣だ」という擁護論がどこからともなく盛り上がり、気が付けば何十年もズルズルと続いている。業界がひっくりかえるような大不祥事などが起きて、尻に火が付いてようやく少し動くような感じだ。
その分かりやすい例が、建設業界だ。
こちらも運送業界と同様、「多重下請」が当たり前だった。「職人」や「1人親方」といったカルチャーのあるこの世界では、高度経済成長期やバブル期など4次請け、5次請けという話も珍しくなかった。それはつまりピンハネが増えるということなので、末端になればなるほど低賃金という問題がまん延した。
しかも、下請け企業がミルフィーユのように多層になることで、責任の所在が曖昧(あいまい)となり不正も増えた。分かりやすいのは、1990年に東北新幹線の地下工事中にJR御徒町駅北口の通称“春日通り”が5メートル陥没したことだ。これは孫請けの施工業者が凝固剤注入の手抜きを行ったから。
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