「転職エージェントの倒産」が急増 人手不足なのに“4年で4倍”に、なぜ?(1/2 ページ)
コロナ禍前の2019年と比べ、23年の転職エージェントの倒産数は4倍に跳ね上がりました。各社、人手不足を嘆いているのに、なぜなのでしょうか?
転職経験者であれば一度はお世話になったことがあるかもしれない人材紹介会社。人手不足の今、企業と転職希望者との橋渡しをする存在としてより身近なものになっています。
しかし2023年は、00年以降で最多の16件の倒産が発生(東京商工リサーチ調べ)。規模は大きくないですが、コロナ禍前の19年(4件)の4倍と急増しています。
矢野経済研究所の調査によると、人材紹介業の市場は22年に3000億円を超え、年間18%以上の著しい成長を見せています。人手不足に加え、市場規模も拡大しているにもかかわらず、なぜ倒産する人材紹介会社が出てくるのでしょうか。その背景について解説します。
人材紹介会社は許可制
人材紹介会社の倒産が急増している理由を解説する前に、そもそも「人材紹介会社」の定義から説明します。転職エージェントと呼ばれることが多い人材紹介会社の正式名称は「有料職業紹介事業者」です。
求職者と企業などの求人事業者との仲介を行い、就職が決まった際に手数料を受け取ることにより収益を得ています。その歴史は意外と古く、江戸時代には「口入れ屋」と呼ばれる人材紹介会社の原型があったといわれています。
人材紹介会社は許可制です。事前に管轄の労働局の窓口へ書類を提出し、要件を満たしていると厚生労働省が判断した事業者のみが営業できます。労働法の一つである職業安定法により活動内容が定められており、建設や港湾事業者への人材紹介は禁止されています。最低でも1人の職業紹介責任者がいることが条件で貸借対照表に記載された内容や事務所の要件なども審査されるので、誰でも簡単に始められるわけではありません。
市場は伸びている
冒頭で示した通り、人材紹介業の市場は年間18%以上と、著しい成長を見せています。成長の要因は、昨今の人手不足にあります。
大手企業であれば求職者の方から問い合わせがあるかもしれませんが、特に中小企業に関しては、今までのようにハローワークや転職サイトに求人票を掲載しても応募すらないというところもあります。ハローワークの掲載は無料ですが、転職サイトに求人を掲載するには費用が発生します。どうせお金を払うのなら、確実に人を紹介してくれる紹介会社を利用しよう考える企業も増えています。
転職希望者にとっても、紹介会社は不可欠な存在となっています。従来は、ハローワークや求人誌、求人サイトなど求人情報は特定の媒体に閉じていました。しかし現在は、SNSや各社のサービスなどを通して手軽に、これまでと比べ物にならないほど多くの情報を入手できます。
その反面、情報が多すぎて絞り切れないという人もいるかもしれません。こうした求職者にとっては、寄り添って指針を与えてくれる人材紹介会社は頼もしい存在でしょう。
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