「転職エージェントの倒産」が急増 人手不足なのに“4年で4倍”に、なぜ?(2/2 ページ)
コロナ禍前の2019年と比べ、23年の転職エージェントの倒産数は4倍に跳ね上がりました。各社、人手不足を嘆いているのに、なぜなのでしょうか?
派遣会社と異なり、高い利益率を生み出すことができる
人材紹介というビジネスの規模はさまざまです。しかし、フリーランスから数千人を超える上場会社まで、そのビジネスモデルはほぼ共通しており、シンプルです。紹介した求職者の入社が決まれば、紹介先企業から紹介手数料を受け取る。この紹介手数料が収益の中心です。
一般的に紹介手数料は、入社が決まった求職者の初年度年収の30%前後といわれています。年収400万円の人が入社したら、紹介会社は紹介先企業から120万円を受け取れます。
しかし、市場価値の高いスキルや技術を持っている求職者の紹介手数料は割合が高くなる傾向にあります。ITエンジニアやAI技術者といった希少性の高い職種の転職では手数料100%ということもあります。転職時の年収が1000万円だとしたら、そのまま1000万円が人材紹介会社に支払われるということです。したがって、AIや医療などの専門スキルを持っている転職希望者を抱えている会社のほうが収益性は良いです。
一方で、短期の非正規雇用者の紹介に特化した会社もあります。こうした仕事は「日々紹介」と呼ばれ、労働者に支払われる日給に対して何%といった手数料を受け取る仕組みとなっています。手数料の割合は、正社員と比べて低いですが、スキルを求められないケースも多いので人数をそろえて対応するモデルとなっています。
また人材紹介会社は、派遣会社とその事業内容を混同されることがありますが、実態は異なります。人材紹介会社は人を探している企業に求職者を紹介(マッチング)するまでにとどまります。日々紹介といわれる案件でも、紹介した先の会社がアルバイト社員として雇用します。それに対して、派遣会社は自社で雇用している人を企業に派遣します。収益の柱は、派遣した会社に請求する料金と派遣社員に支払う給料の差額、すなわちマージン料によるものです。
マージン料によりボロ儲(もう)けしているというイメージがある派遣会社ですが、昨今では派遣社員への社会保険料の企業負担分が増加しているため、利益率は年々減少しています。営業利益率は5.9%前後(厚生労働省「労働者派遣法施行状況調査結果(派遣元に対する調査)」)といわれており、他の業界と比べて高いとはいえないでしょう。
人材紹介会社は、求人企業と求職者のマッチングのみですので社会保険料の負担は発生しません。経費も紹介会社の社員の給与とその活動費くらいしか発生しないため、利益率が高いビジネスモデルといえます。こうした状況を踏まえてか、職業紹介会社の新規参入は増え続けています。筆者の元にも新規許可習得の問い合わせが毎月のように寄せられています(人材紹介会社の許可取得の代行業務は社会保険労務士の独占業務です)。
商品となる人材の不足が倒産の原因
ただ、参入業者が増えれば、当然競争は激化します。頭数をそろえるのが最低条件である派遣と異なり、人材紹介会社は企業が求める高度なスキルを持った即戦力人材を集める必要があります。人手不足とはいえ、要求するスキルが満たされなければ採用は見送られるでしょう。ビジネスモデルがシンプルなため、求職者の転職が決まらなければ売り上げはゼロになってしまいます。売り上げがなければ、経営が成り立たなくなり、倒産してしまうのです。
こうした状況下で求職者は、どう人材紹会社と向き合えばよいのでしょうか? 大手だから安心、フリーランスだからと避けるという企業規模で判断するのではなく、担当者の態度を見るとよいでしょう。むやみに転職を急がせる、給与など転職先の良い面だけを強調する担当者は要注意です。転職できたもののイメージと異なる仕事内容や社風に満足できず、再び転職活動を始めることになりかねません。
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